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幸せとは、15センチの塀の上を歩くようなもの

私の履歴書
Jul 27,2017

僕は幼い頃、母親から「素直」こそが一番大事なこと、だから常に「素直」でいなさい、と何度も何度も繰り返し言われてきました。

友人が家に遊びに来ても、母親が彼らを見る尺度は常にその子が「素直」かどうかだったし、彼らが帰った後でも、「あの子は素直でいい子ね」と僕に褒めて話すことも度々ありました。

へぇ、そんな風に自分の友達を見てるのかと、毎回思わされたものです。

この「素直」について最近考えることがあります。

若かりし日の母親とわたし
母親から何度も繰り返し言われているうちに、僕は普段から常に「素直」でいるべきなのだと漠然と思うようになりました。
「ウソをつかないこと」
「思ったことを捻じ曲げないで、感じたまま率直に相手に伝えること」
「意地を張ったり、自分を必要以上に大きく見せようとしないこと」
松本少年は「素直」について、母親の言う意味を幼いながらに考え、そんな風に解釈していました。
だから僕は子供の頃から嬉しいことは嬉しいと表現し、学校から家に帰った時にもその日あった出来事を包み隠さずオープンに、すべて話して伝える子供でした。
決して無理矢理やっていたわけではないけれど、今思えば、母親から言われた「素直」でいることを日々実践していたのでした。
「素直」でいることって、なかなか意図的にできることではないですが、幼い頃の松本少年は「素直」でいることの大切さだけは実感して育ったのです。
いえ、正確に言うと「素直」な状態でいることの大切さはよくわからなかったけど、母親の教えを守るために、なんとなくそうしようと努力していた子供でした。
しかし大人になるにつれ、だんだんと「素直」について疑問を持つようになります。
20代、特に社会に出るようになると、「素直」でいることは、よろしくない場合があると感じることが増えてきました。
本心を隠し、ウソをつくことで、自分が相手より優位な立場に立てることを学ぶのです。
そして素直に感情を伝えると、時として相手を傷つけるケースもあること、「素直」が万能ではないことを知るのでした。

「素直」でいることは重要かもしれないが、自分が感じたことをストレートに出すと、自分の立場が悪くなる場合がある、まずは、まわりの状況を見て判断すべきである、
ウソをついて社会でうまくやっている人を見るにつけ、まず状況判断、そして損得を考えてから振る舞うことを学べと何度も言われているような気がしました。
素直は幼稚。
そう感じた時、いつでも「素直」でさえいれば人生はうまく行く、「素直」こそが自分の人生を豊かにする最良の方法だという母親の教えは間違っているのだと感じるようになるのです。
母親が僕に教えてくれた「素直」でいることの大切さは、社会生活には必要のない、それどころか、むしろ幼く恥ずかしいことだと思うようになるのでした。
父親は常に穏やかで、うるさいことは何も言わない人でした。
しかし最近そのことについて、考えることがあるのです。
理由はわかりませんが、今頃になってそれについて考えるようになりました。
今では母親が教えてくれたことは、正しいと感じる機会が増えたように感じています。
一回りして今、素直に物事を考えること、気持ちや感情と素直に向き合うことは、やっぱり人生を渡っていく上で最後の砦のような気がしているのです。
自分の気持ちを伝えたり、物事を考えたりする時に、邪悪なフィルタが働けば、その場だけは一時的によい結果になるかもしれないけれど、長期的に見れば高い確率でよくない結果につながるように思います。
恋愛、仕事、すべてにおいてそうでしょう。
自分にとって何がもっとも大切か、それを1番の理由として決めた結婚であっても、大切な順番を間違えた選択だったとしたら、後日そのツケは必ず自分に回ってくる。
それを相手のせいにする人もいますが、それは自分が選んだことなのです。
仕事でも、本質から離れて誰かの目だけを最優先したり、相手の言葉に素直に耳を傾けず、強引なパワープレーを選択した連中は、決してよい結果にはつながらない。
以前勤めていた企業の同期たちを見ていて、そう感じます。
一時的に仕事ができると思われていたとしても、長期的にはうまくいっていないのです。
特に僕らの年齢くらいになってくると、その結果は顕著に表れているように思います。
うちの会社のスタッフを見ていてもそう感じますね。
自分の求めること、自分の好きなこと、それらに対して常に素直な気持ちでいることが一番重要の気がします。
自分が好きなことを仕事にできる人は圧倒的に少ないでしょう。
自分がそれをできることの幸せ。
幸せの道は、15センチくらいの塀の上を歩いているようなものです。
塀の両側には高低差。
間違えれば、あっという間に15センチの外へ落ちてしまう。
仕事でも恋愛でも、それは同じでしょう。
それに気が付かない人は多い。
すべてを解決するカギは「素直」なココロにあるように感じます。
それを教えてくれた母親に感謝しなければいけない。
他の人がどのように育ったのか、あまり聞く機会はないのでわかりませんが、家庭環境は大きく影響しているように思います。
僕自身はこの大切なことを教えてくれた母親を今でもリスペクトしているのです。

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松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
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