談話室松本をリニューアルしました。
これまでの談話室松本はこちらからチェックできます

  1. top
  2. ファッション
  3. オーダースーツの話 その2

オーダースーツの話 その2

ファッション
Jan 13,2017

前回内容がマニアックだったのか、まったく反応がなかったにもかかわらず、その続編を上げちゃいます笑

スーツの話、第1弾はこちら

/blog/danwashitsu/2017/01/post-3.html

スーツと言っても世代によって着るものや買う場所が違うので、これもちょっと面白いなあと思って街行く人を見ています。

サヴィルロウにある1806年創業の老舗Henry Poole&Co(ヘンリープール)
映画KINGSMANの元ネタ、こちらもサヴィルロウにあるHUNTSMAN(ハンツマン)
映画「2001年宇宙の旅」の衣装デザインを手掛けたHardy Amies(ハーディエイミス)
チャーリー・ワッツの御用達 トミーナッターの流れを汲むchittleborough & morgan(チットルバラ&モーガン)
トムフォードもスーツを作りに来る ソフトテーラリングAnderson&sheperd(アンダーソン&シェパード)
ロンドンに行ったとき、すごく意外だったのはスーツを着ている人がほとんどいないという事実です。
街を歩いているときはもちろん、地下鉄やバスに乗っていても、日本と比べて圧倒的にスーツを着ている人が少ないのです。
というか、まったくいないに等しい。
ジャケット着てる人ですら少ない。
一人も見ない日も。
確かにシティのエリアに行けば、見かけることはあります。
週末には、パブから路上まであふれたビジネスマンをたくさん見ることもあります。
でも特定の地域、曜日にしか彼らはおらず、男子全体の中での着用率は相当に低いと思われますね。

これは意外でした。
紳士の国英国ならスーツを纏ったジェントルマンたちがたくさん、、、、と思いがちですがまったくそれは的外れということ。
パリも同様でした。
東京で電車に乗ったら、どの路線かに限らず車両にいる半分くらいの男子はスーツを着ていると思います。
東京にいる限り、別に大手町に行かなくても、新宿でも渋谷でも、立川でも上野でも、二子玉川でも、スーツを着たビジネスマンを見ない場所はありません。
1885年創業シャツのロールスロイス、Turnbull&Asser(ターンブル&アッサー)
同じくラガーフェルドが愛するシャツの老舗、Hilditch&Key(ヒルディッチ&キー)
もしかすると、ヨーロッパにおける働く服としてのスーツは、既にその役目は終わってしまったのか?
過去のアーカイブとしてのみ認知され、もうこれ以上進化することはないのでは?とすら思うのです。
たぶんイタリアを除いて。。。
逆にスーツ着用率の高い日本においてこそ、これからも独自に進化する可能性があるように感じます。

スーツって営業の人が着ているイメージがありますが、20代の若者はスーツセレクトやアオキなんかで買っているのでしょうか?
制服として買うのではないお洒落な諸君は、いったいどこでスーツを選んでいるのでしょう?
今ではオーダーなら麻布テーラーで安く出来るし、ユニクロには何十パターンもの組み合わせでオーダーできる優れたシステムもあるようです。
30代はセレクトショップ世代、UAやトゥモローランドでしょう。
20代の時に遊び倒した40代は、ビームス丸の内、新宿伊勢丹メンズ館、そしてこれからは東京ミッドタウンが御用達になるでしょう。
50代はイタリアンクラシコ一筋で、ストラスブルゴに行ってるんじゃないかなあ。
VAN世代の60代はアメリカかぶれで、トムブラウン一筋の人がいっぱいです。

しかし、選ぶ服やスタイルは違っても、すべての世代に共通するのは異国への憧れです。
スーツを購入する際には、背景に少ながらず異国の文化に触れたいという想いがあるのではないでしょうか。
それは洋服が西洋から輸入されたものであることにも関係があるかもしれません。
きっかけは古い映画の中のスターであったり、ふと見た海外のインスタだったり、インポートブランドのカタログや雑誌であったり。
しかし前述の通り、異国の現在は日本で考えている状況と随分と違っているとしたら。
日本人の豊かなイマジネーションが、ルーツである異国を超えちゃっていたとしたら。
スーツも日本固有のスタイルとして、独自に発展する可能性があるかもしれません。
サヴィルロウに近いJermin streetには名立たる靴ブランド Crockett&jones、Edward Green、John Lobb
Jermin streetにグルーミングや香りのお店がセットであるのは紳士の嗜みだからでしょう
渋谷にあるテーラーケイドは、60年代のアメリカ映画に出てくるスターを手本にした、いわゆるIVYスタイルを手本にしたスーツ作りを得意としています。
それが今では本家アメリカに乗り込んで、アメリカ人からオーダーを取るようになった。
アメリカで生まれたスポーツウェアとしてのトレーナーを日本国内で作っているループウィラーは、大量生産以前の品質にこだわり、アメリカの本家ナイキとコラボしてトレーナーを作るまでになった。
イタリアで修業した鈴木氏率いる神戸のビスポークシューズのスピーゴラは、香港やアメリカでオーダーを取るように、同じく英国サヴィルロウで修業した久保田氏のブルーシアーズも香港でオーダーを取るようになりました。

海外で技を習得した日本人が帰国後につくる製品は、本家を真似して作る○○風、あるいは海外に行かずとも憧れのスタイルを研究して作った本家のナンチャッテな類似品とも思われがちですが、そこに独自の要素をブレンドして本家も驚くレベル、本家を超えるまでになっているというのが面白い現象だと思います。

これはスーツに限った話ではないでしょう。
日本人は優れたマーケティング能力があるとつくづく思います。
そして丁寧な手仕事。
海外の技をコピーして国内で勝負するのではなく、海外に出てもっともっと活躍して欲しいですね。
気がつけば、本切羽ばかり並ぶクローゼット

SHARE THIS STORY

Recent Entry

松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
    青山ブックセンター