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ショッパーが教えるブランディング

仕事
Jan 25,2018

とうとう、年末から更新の頻度が下がってしまいましたね・・・

実は今、かなり業務が立て込んできていて、ブログの記事を書く時間がほとんど取れません。

今まで7年間、部活の朝練のように毎週続けてきたブログですが、ここへ来てちょっと滞ってきてしまいました。

どれがどの百貨店のショッパーかわかりますか?
今日はそんな中でも頑張って1記事書きたいと思います。
ここ最近、受注したブランディングの仕事の中で、店舗で使う包装紙やショッパーのデザインも合わせて依頼されるケースも増えてきました。
今も老舗企業が立ち上げる新ブランドのロゴ開発、というか現ブランドのリブランディングをコンペで受注して考案中です。
その中でショッパーのデザインも視野に入れてロゴを考えている途中です。

ショッパーについて調べてみたんですが、今ってショッピングサイトで中古のショッパーだけ大量に売ってるんですね。
まったく知りませんでした。。
楽天のランキングだと、1位はシャネル、2位はヴィトン、3位が梨花先生のメゾンドリーファーで、1点800円から2000円。
これバカにならないですね。
結構高く売れるんだなと。
ファンは普段使いとしてのショッパーを求めるのか?それともメルカリに売るとき用に必要なのか、はたまた何かの別の用途なのか?
ショッパーは、ブランドのアイデンティティを凝縮して表現したものであり、街における広告媒体にもなるため、重要なブランドツールだと思います。

さて老舗のショッパーと言えば、やはり百貨店でしょうか。
2014年あたりに東京にある百貨店は、相次いでショッパーをリニューアルしたのは記憶に新しいと思います。
今日はそんな百貨店のショッパーを見ながら共通点を探してみましょう。
この和のパターンはもう世の中に定着しましたかね?
本来は着物の柄だそうですよ
まず日本で最初のデパート、日本橋に本店を持つ三越です。
ショッパーをリニューアルした2014年は、創業から110周年にあたる節目の年でした。
僕たちも日本橋本店の仕事でお世話になっている会社です。
以前は、彩度の高い色面でデザインされたショッパーと、牛の模様のような赤い有機的なフォルムが描かれた包装紙の組み合わせでした。
リニューアルのデザインは、友禅作家で人間国宝の森口邦彦という人。
元々は着物の友禅染のパターンで、それをショッパーに転用したとのこと。
僕は以前のショッパーの方が強いアイデンティティがあって好きですが、新しいショッパーの登場から4年、浸透するまでにはまだ時間がかかりそうですね。
包装紙の方は、60年前以上前に洋画家の猪熊弦一郎がデザインした、牛みたいな模様を今も使用しているようです。
ちなみに、以前のショッパーの真ん中に書かれた文字、牛の包装紙にもあるMitsukoshiという英語は誰がデザインしたか知ってますか?
アンパンマンの作者やなせたかしさんのデザインなのだそうですよ。
オドロキですね。
ショッパーが採用された1950年、三越の宣伝部に在籍していたそうです。
三越といえばこの牛のパターンでしょう。
以前のショッパーには真ん中に店名がありました。
次は昨年、社長交代で話題となった伊勢丹です。
本店は新宿で1933年開業。
伊勢丹のショッピングサイトは、過去3回に渡り、大規模なリニューアルを私たちが担当させていただき、またそれ以外の様々な仕事でも非常にお世話になっている会社です。
新宿生まれの自分にはとても馴染みのある百貨店。
伊勢丹メンズ館が、まだ男の新館だった頃から利用しています。
46年ぶりにショッパーをリニューアルしましたが、デザイナーはスコットランドタータン協会の理事(もちろんスコットランド人)で、新しいショッパーのタータンチェックは、スコットランドタータン登記所にも正式登録されたとのこと。
こちらは三越と違って、今までの要素を守りながら、リデザインした感じですね。
伊勢丹ってなぜタータンチェックなんでしょうか。
それはティーンに向けたデパートだということを表現するために、当時流行していたチェックのモチーフを採用し、大人向けの百貨店と差別化したという背景があります。
50年前から「毎日が新しいファッションの伊勢丹」(企業スローガン)だったわけですね
左が本館、右がメンズ館。新しい方は店名が消えていますね。
さて次は大阪に本社を持つ高島屋。
バラの包みのタカシマヤは有名ですが、日本橋高島屋も同じく2014年にショッパーをリニューアルしています。
こちらは期間限定のショッパーらしいですが、建物のイラストを採用してますね。
1933年に建てられた建物が、2009年に国から重要文化財の指定を受けたことが採用の理由でしょう。
僕も知りませんでしたが、日本橋の高島屋って村野藤吾が増築してるですね。
これもちょっとびっくりでした。 
金のシャッターがついてる手動式のエレベーターは、僕が子供の頃から変わってなくて大好き。
他の店舗は、以前と同じくバラのショッパーを使用しています。
バラのモチーフは1952年から採用しており、これはこれで広く定着しているイメージですね。
なかなかよいイラストなんですが誰だかわからなかった。
バラの輪の中にある店名の書体が変わっているのに気が付きました?
老舗ばかりの百貨店の中にあって、東急の1967年開業は新しい方でしょう。
本店は渋谷です。
こちらも同じく、2014年頃にショッパーをリニューアルしました。
三越は和で歴史を、伊勢丹はチェックでファッションを、高島屋は文化としての建物を。
しかし渋谷東急にはこれと言って、あまり訴求するものがないようです。
以前もそうでしたけど、リニューアル後のショッパーも中途半端で、香水をモチーフにしているようですが、なんだか雑貨店みたいで、あんまりよいとは思わないですね。
以前のショッパーにあった東急のロゴ=菱形を流用しているのだと思います。
以前も文房具か、本屋みたいなショッパーでしたけど。
しかし東急本店のウリってなんだろうか、と考えてもパッと出てこないように、アイデンティティを視覚化するのはむずかしかったのでしょうね。
僕は東急本店と言えば、何と言っても地下の食品フロアだと思いますww
東急のショッパーデザインってちょっとナゾじゃないですか?
これら4つのリニューアルを見ていて、共通することを発見しました。
それは示し合わせたようにすべての百貨店で、店名の表記が小さくなっていることです。
ここまで書いてきたように、それぞれの百貨店では顧客に一番伝えたいこと=個のアイデンティティを反映したモチーフをデザインに取り入れていることがわかります。
これはデザインのクオリティとは別に、ブランディング施策としては正しいアプローチでしょう。
そして以前よりも店名の表記が小さく、主張しなくなっていることの理由として、いくつか考えられると思います。
1.一流二流などのランクをつけて、店の名前で買う時代は終わった
2.看板を読ませるより、特定のパターンやイメージによってブランドを想起させるアプローチに。
3.採用したモチーフの背景にあるストーリーもブランディングの重要な要素
などの共通した要素があると思います。
ちょっと東急だけはわかりませんが。
ソール・バスのデザインは彼の絵本からの転用です。どちらも素敵。
余談ですが、僕が個人的に大好きな百貨店のショッパーは、西武と京王です。
言うまでもなく、西武は田中一光先生。
そして京王は、大好きなソール・バス師匠のデザインです。
この2つの素晴らしいデザインは、ずっとリニューアルされて欲しくないですね。

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松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
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