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本屋は昭和の遺物になってしまうのか

本
Feb 28,2018

先週1つの悲しい出来事がありました。

うちの会社がある代々木上原の駅前で、長い間ずっと営業してきた本屋がとうとう閉店してしまったことです。

これは本当にショックでした・・・

ある日、お店に突然この貼紙が。。
幸福書房。
開業から40年、ずっと家族経営で運営してきた20坪の小さな書店です。
JRや私鉄の駅を降りた商店街に、必ず1軒はあるチェーン店ではない普通の本屋。
皆さんの住んでいる駅にもきっとあったことでしょう。
以前代々木上原には本屋が3軒ありました。
幸福書房北口店、同じく幸福書房南口店、そして大手の文教堂書店。
15年くらい前に幸福書房北口店が閉店し、以後南口店のみで営業を続けていました。
幸福書房は駅を出て5秒くらいのところにあります
僕はこの本屋が好きで、会社の本を定期的に買っているうちにおじさんと顔見知りになり、時々会話する間柄になっていました。
文教堂には雑誌以外、琴線に触れる本はほとんどありませんが、幸福書房には建築、デザイン、ライフスタイル、サブカルまで、小さい売り場面積にも関わらず、必ず欲しい本が見つかる偏ったというか、マニアックというか、でも自分にとってはストライクな品揃えが魅力でした。
建築雑誌のGAとか、海外のデザインを紹介する+81のような専門誌は、文教堂には売ってません。
グラフィック社、PIEブックス、リトルモア、そういうどちらかというとマニアックな出版社の本を取り揃えていたのが幸福書房だったのです。

閉店の足音はヒタヒタと迫ってきていたのかもしれません。
代々木上原の隣、代々木公園の駅前にあった本屋は、10年くらい前に閉店。
そのあとはフレッシュネスバーガーになって、一足早く商店街に1軒も本屋のない駅となってしまっていました。
自分は駅前商店街に1軒も本屋のない駅なんて、まったく魅力がないと当時嘆いていたものです。
前述の幸福書房の北口店が閉店したあと、代々木上原近くの富ヶ谷にあった家族経営の本屋も3年くらい前に閉店。
近所の商店街からどんどん書店が姿を消していく状況が迫っていました。
最終日には林真理子さんの挨拶もあって、大勢の人が集まりました
幸福書房閉店のニュースはNHKでも取り上げられました。
書店を営む家に生まれ、代々木上原に住む林真理子さんのお気に入りの本屋であったことも大きいでしょう。
彼女は自分の育った家庭とこの書店を重ね合わせていたのかもしれません。
幸福書房と林真理子さんとの関係は、閉店に際して出版された書籍「ピカピカの本屋でなくちゃ!」にも出てきます。
幸福書房の売上に貢献するため、1万冊の本にサインしたと。
そしてこの本がですね、、、おじさんの人柄、書店経営に対する真摯な姿勢が書かれていて、思わず涙が出てきてしまう内容で、、、、
おじさんは訪れる客層の中で、特定のジャンルが好きなお客さんについて詳細に把握していて、その人たちに向けに本を仕入れる、だけれども入荷したあと決して声は掛けない、陳列した棚を通してその人たちと対話するというくだり、また書店というものは人のお金でやるべきものではないという考え方などに彼のストイックな人となりが表れていると感じました。
本が大好きで、仕事に強い信念があって、自分の中にルールを持っている人。
そんなおじさんの本屋が姿を消してしまうのは、本当に残念でなりません。
読んでいると、本当に泣けてしまう本。
最終日におじさんにサインをもらいました。
本の中で、1992年に渋谷区に45軒あった本屋は、2016年時点で10軒に減っていることが紹介されていました。
10軒と言っても、その中には渋谷駅前のツタヤや丸善などの大型書店が含まれているので、街の本屋は本当に少ないはずです。
2018年の現在、さらに減り続けていることでしょう。
閉店の原因は雑誌がまったく売れなくなった状況にあると書いてあります。
書店は雑誌の売上を原資として、文庫本など書籍の仕入れに充てる、雑誌が売れなくなると仕入れの予算がなくなって、本のラインナップに魅力がなくなり、お客さんも減ると。
1999年から 2017年までに 9,770軒の書店が減少。参照元:http://1book.co.jp/001166.html
散歩がてらに本屋で立ち読み、そんな休日の過ごし方は昭和の遺物になってしまうのでしょうか・・・
もう本屋はキーステーションのみ、電車の乗らないと行けない場所になってしまうのか。。。
子供の頃から行けば何時間も滞在し、息抜きや情報収集には欠かせなかった書店。
そして店内の匂いが大好きだった書店。
最終日におじさんと。
そんな書店がどんどん少なくなり、ライフスタイルも変化していく。
自分の大好きだった本屋の滞在時間が、生活の中から消えていくのは本当に寂しい限りです。

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松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
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