談話室松本をリニューアルしました。
これまでの談話室松本はこちらからチェックできます

  1. top
  2. 仕事
  3. 教える、教えられる、人の成長を促すことの難しさ

教える、教えられる、人の成長を促すことの難しさ

仕事
Dec 03,2020

会社を運営していて、いつも感じることがあります。

1つは、一定以上の仕事を常に確保し、会社を継続・維持していくことの難しさ、

これは働くすべての人にとって当たり前のことですが、

僕たちの仕事は、数字以外にクオリティ(アイデアや創造性も含む)を同時に維持しなければならない。

現在コロナ禍の中で、数字と品質の両方を確保していくことは多くの制作会社の経営課題になっています。

人の成長を全員で本気で考えなければ、会社の成長はないと感じています。
もう1つが人の問題です。
人の成長をどうやって実現していけばいいのか?
どのようにサポートしていけば、人をベストな方向へ導いてあげられるのかという課題。
僕らの業務は何かを仕入れて、横に流して粗利を取る仕事ではありません。
人がゼロから作り出す仕事、人の成長こそが会社が成長する原動力であり、人の成長がなければ成立しないビジネスなのです。

モノ作りをする前に、人としてどうあるべきか?(これが一番大切)
自分の強みの認識と、自覚している弱みの克服。
目標と自己実現。
能動的にリスクを取らなければ成長はできないことへの自覚、
自分の仕事にプライドを持つこと、
仲間をリスペクトすること、
信頼できる関係を自分から構築できるか?
人のことになると、課題は山積みです。
仕事で数字を確保することも重要ですが、それより人を成長させることはもっと難易度が高く、かつ極めて重要なことだと思います。
ビジネスにおけるイノベーションは、人の成長なくして実現は不可能なのです。

新しいスタッフが入社したら、僕はまずこう話しています。
クライアント、上司、先輩、同僚、後輩、
彼らが一緒に仕事がしたいと思われる相手、求められる人になれ、
10求められたことを10で返すのではなく、常に12で返す努力を怠るな、
それらの積み重ねにより、誰かに求められる人になること、
それこそが働くことの意味であり、仕事をすることで味わう本当の喜びにつながるはず。
そのために、提示された課題の先にある本質を見極め、プロジェクトをゴールに導け。
これを伝えているのは、今まで自分自身が長い間そうやってきたからに他なりません。
誰のためにやっているのか?何のためにやっているのか?
それは相手の喜びのためであり、それが自分の働く喜びだから。
自分に心がなければ、相手の心を打つことはできないのです。

OJTの一環として、作った8種類のフォントに関するテスト
4年前、入社したスタッフ向けにOJTのプロジェクトを立ち上げました。
立ち上げた理由は色々ありますが、半年後から確実な結果、パフォーマンスを出してもらうためです。
入社から6ヵ月間は、業務で求められる必要最低限のスキルを習得してもらう期間として考え、各チーム内でOJTの課題を徹底して受けてもらう、それを全社的なルールとして浸透させようと考えました。
内情を言ってしまうと、これは4年前に僕が発案したのですが、
当初は全員に納得感がなく、繰り返し伝えてもなかなか認識してもらえず、結局プロジェクトをスタートさせるまでに1年もかかってしまった。1年間は説得です。
OJTのプロジェクトは当然、社内の協力がないとスタートの実現できません。
しかし、OJTの課題を実施する側のリーダーたちは同じことを感じていたようでした。
・育てるのではなく、既に十分なスキルを持った人を入れて欲しい、
・そういう人に業務をすぐに丸ごとまかせたい、
・人に教えたくない、自分が業務を持ちながら時間をロスする面倒なことはしたくない。
・人に教えるくらいなら自分でやった方が早い、
概ねそんな意見だと推測します。
反対されたというより、その先のことが見えないために同意できなかった、ということなのだと思います。

特にOJTを実施するリーダーたちは、課題を考案して実行に移し、その結果を本人たちに毎回フィードバックしなければならない。
そこに時間を取られることを、相当嫌がっていました。
半年間は実務をせず(最低3ヵ月)、用意した課題のみをやらせるということにも納得していないようでした。
欲しいのは即戦力、すぐ業務の末端の仕事をサポート・ヘルプしてくれる人。
面倒を見なくても、ひとりで結果が出せる人
半年も課題をやらせるのは時間の無駄。
みんな同じことを考えていたと思います。

本当にそうだろうか?
末端の単純な仕事をやらせれば、リーダーたちの業務は楽になるのか?
目先のことならそうかもしれない。
でも、それではやらせた業務内で求められる本人の限られたスキルしか把握できない。
それが末端のオペレーション業務であれば、なおさらわかることは少ないでしょう。
本人の課題はどこにあり、何ができて、何ができないのか把握できる状態は、1年以上先になる可能性が高い。
個人の成長課題を発見し、そこから引き上げていく成長計画を立てるためには、実務を行う前に(業務を行いながら)徹底して本人と向き合う必要があると思います。
そのため、2~3時間の短い時間で完了できるOJTカリキュラムをいくつも作り、本人の傾向やスキルを的確に判断し、成長課題を見つけて本人と話すことが必要なのです。
入社してから数か月はそれしかやらない。
そのどこかで躓いたら、繰り返して行う類似カリキュラムをあらかじめ多く作っておき、何度も繰り返しやってもらうようにしています。
そして自分の足りない部分=課題を自覚させて、克服してもらう。
各チームでこのカリキュラムを作ってもらうのに時間がかかりました。
カリキュラムを作る上でもっとも重要なことは、短時間で結果が出せる内容に絞ることです。
そのためには通常行っている業務を細かいタスクに分解して、それを短時間で成果物としてアウトプットするショートカリキュラムにするのがよいと思います。
また結果を判断する明確な評価軸は、出題前にあらかじめ明確に設けておくこと。
そして課題は、実務に直結する具体的なスキルの訓練にすることが大前提です。
達成できない、設定した時間をオーバーする、ミスが多いなど、
苦手な個所がわかれば、本人に自覚してもらった上で、そこを何度もトライして克服してもらう。
そうすれば実戦に入っても、そのスキルが必ず役立つはずです。
特にうちの会社では、その中で時間の比重をかなり重く見るようにしています。
OJTはやり方に過ぎません。本当の課題は、教える側の意識にあるのです。
今まで社内にOJTのカリキュラムなどありませんでした。
実務の末端の業務をヘルプと称して、入社したスタッフにやらせていた。
社内でそれをOJTと呼んでいましたが、指導や成長支援ではなかったと思います。
OJTカリキュラムの訓練なしに、実案件の仕事をやらせてできなかった場合、上司と部下の関係も悪くなる。
そこには、上司の「このくらいできるはず」という思い込みがある場合がほとんどです。
しかしやらせてないのに、できると考える方が間違っているのです。
教えてないのにできるわけがない。
それに対し、「お前はできない」と否定する前に、できるようにするにはどうすればいいのかを先に考えるべきでしょう。

そりゃもちろん、人を雇って半年も利益を出さない状態は、短期的に見ればいいわけはありません。
しかし、OJTを終えて半年後から実務で結果を出す速度は、OJTなしで末端の仕事からスタートした場合より、確実に早いはず。
いえ速度だけでなく、本人の課題を早期に把握するこということが非常に重要だと思っています。
的確な成長支援を行うことが、中期的に長い目で見れば、最短で結果を出すことにつながる。
その意味で、よく求人サイトに書いてある「即戦力」を求めるのではなく、入社からの半年間を会社は、成果を求めない投資と考えるべきでしょう。
人に教えるのは、時間のロスだからやりたくないという認識を改めて、
未来の組織の成長につながる、みんながハッピーになるための最短コースだと考える。
もちろん教える側も大変だと思います。
しかし上述したように、手をかけただけ、それは自分や組織全体に返ってくる。
人に教えることは、教える側の成長にもつながると思います。
自分に心がなければ、相手の心にも響かない。
人の成長をそれくらい重要に考えていることをリーダーたちにも理解して欲しいと思っています。

OJTを受けた本人たちにとっても、業務に必要な最低限のスキルはすべて教えた、という経緯を踏めば、実戦に出る覚悟は高まると思います。
OJT終了を1つの区切りとして、次のステップのゴールを示すこともできるでしょう。
彼らの業務に対する傾向もOJTで知ることができるため、スキルに応じた適切な業務をアサインすることも可能。
そして何より、本人たちができるかどうか曖昧な状態で、本人の経験年数や年齢だけで判断し、「できるはず」という思い込みで仕事をまかせた結果、できない場合に起きる不幸な状態を避けることができる。
これが一番重要なことかもしれません。
このような場合、上司と部下の間で往々にして起きる軋轢は、両者の認識の違いによることが大きいのです。
リーダーは部下を見ているようで、見ていない場合がほとんど。
丸ごとすぐまかせたいという思考は、できるだけ面倒なことはせず、自分のワークだけしていたいという考えに基づいているのです。
そのような思考では、個人プレーの組織からの脱却は程遠いと思います。

ここに書いたことはすべてオリジナルで、ゼロから社内で行ったものです。
誰かに具体的なアドバイスを受けたわけではないために、悪戦苦闘の連続です。
だからもっと勉強したい。
皆さんの会社では、人の成長を促すためにどのような社内システムがあるのか知りたいです。

SHARE THIS STORY

Recent Entry

松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
    青山ブックセンター