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シビれる 手描き文字のタイポグラフィ

クリエーター
Jul 06,2017

ここ最近、手描きフォントが見直されてブームになっています。

アメリカやヨーロッパでのチョークアートやヴィンテージ書体の流行と同様、日本でも昭和の洒脱な手描き文字が注目されているように思います。

この現象は間違いなく、デジタルの反動でしょう。

昭和の時代、みんなが目にする書体、たとえばテレビや新聞、雑誌、チラシ、駅や道路のサイン、野球場、街にある商店の看板、映画のタイトルまで、ほとんどの見出し書体は手で描かれていました。

それを専業とする職業があったのです。

写真植字、いわゆる写植が登場するまで、書籍の印刷には活字が使われていましたが、それは主に本文だけに使用され、商業印刷の分野で人の注目を集める見出しや強調文字には、必ず職人による手描きの文字が基本でした。

最近出たこの書籍はとても参考になります
今デジタルの反動から、こうした手描き時代のフォントが見直されているように思います。
街にあふれる昭和の店の看板を集めた写真集も出てますね。
デジタルの技術で、どうしたら手描きのような温かさを表現できるか?
卓越した技術を持った職人が少なくなっている中、特にレタリングを通過していない若い世代がそれを高いレベルで実現できるか?というのは課題でしょうね。
「図案」「商業美術」という概念が生まれた明治以降、内容や目的に合わせて描かれた描き文字は、それ自体が世界観を持つ、素晴らしいものです。
“描き文字のデザイン 日本を代表する45人の「描き文字」の仕事”
日本を代表する明治・大正・昭和生まれの作家45人の「描き文字」仕事を、800点以上の図版とともに紹介した一冊です。
世田谷美術館でやっていた花森さんの仕事もいいけど、鳥居敬一が好き。
ドリフの番組タイトルのデザインは大好き。
中村不折 なかむら・ふせつ 1866-1943
今竹七郎 いまたけ・しちろう 1905-2000
花森安治 はなもり・やすじ 1911-1978
鳥居敬一 とりい・けいいち 1916-2003
篠原栄太 しのはら・えいた 1927-
檜垣紀六 ひがき・きろく 1940-

でもこの本に、なぜ稲田茂が収録されていないのか不思議です。
デザイナーなら、たぶん多くの人が知っている稲田茂。
雑誌や販促に使われる書体デザインの神様みたいな人です。
2009年に惜しくも亡くなってしまいました。(稲田 茂 いなだ・しげる 1928 - 2009年)
稲田さんの仕事は素晴らしい。
雑誌の庶民的な感覚、記事の猥雑さやワクワクするポップさを感じ取って、サッと視覚的に表現できる類まれな才能があった人なのだと思います。
稲田さんの素晴らしい手仕事。こういう才能、そうはいない。
稲田さんは1980年代の写植全盛の時代には、フォント設計も手掛けています。
代表的書体には以下があります。
「イナブラシュ」(1982年)
「イダシェ」(1984年)
「イボテ」(1985年)
「イナひげ」(1985年)
「イナクズレ」(1989年)
「イナピエロ」(1993年)
「昭和モダン体」(1999年)
「民芸体」(2002年)
しかし、写植フォントになってしまうと、その魅力は半減してしまったように感じます。
やっぱり真骨頂は手描き時代の文字でしょう。
でも写植になると手描きの味わいはなくなっちゃうんですよね。
以前このブログでも紹介した鈴木成一の作品集の中でも、稲田さんにインスパイアされた書籍のタイトルが紹介されていました。
そう平凡や明星のような週刊誌の見出し、任侠映画のタイトル、そしてシングルレコードにあるような歌謡曲のタイトルがイメージソースになっています。
こういう仕事は最高ですね。
デザイナーなら機会があれば、1度はこういうアプローチも実践してみるべきだと思います。
鈴木成一師匠もやっぱり稲田さんにインスパイアされています。
鈴木成一 デザインの手本の記事↓↓
https://www.dig.co.jp/blog/danwashitsu/2016/12/post-1.html

この記事を書いていたら、昭和歌謡を聞きたくなってきましたw

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松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
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