東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。
企業の「らしさ」とは何か 2

Jun 18,2025
前回、不二家のリニューアルを例にあげて、企業の「らしさ」の話をしました。
私たちの仕事において、企業やブランドの「らしさ」を定義すること、またそれを視覚化することは非常に重要な業務です。
そしてその答えは解釈によって1つではないということにも、この仕事の難易度の高さを日々感じながら業務に向き合っています
ただ1つだけ言える確かなことがあります。
それは、答えは我々の中にはなく、その企業自身にしかないということ。
勝手にゼロから組み立てるのではなく、隠れているけれど、確かに存在している「それ」を見つける作業に近い。
見つけたら「それ」を言語化して、誰でもわかるように可視化する。
それが私たちの行っている「らしさ」をつくる仕事だと感じています。

生活していて皆さんは「らしさ」について考えたことがありますか?
さて、今日はその「らしさ」のフレームワークをお伝えしたいと思います。
僕は「らしさ」を考案するプロセスをどこかで専門的に学んだわけでもなく、本で読んだわけでもありません。
数多くの案件に携わりながら、オリジナルで考えてきた結果ですから、どこかの先生に違うと言われそうですが、苦しんで色々経験して自分なりに感じていることを集約して定義してみたものです。
先輩や上司から考え方を教わったということもまったくなく、常にゼロから毎回考えていたという経緯です。
ですから今後も変化していくかもしれません。
今回はあくまで現時点での定義をお伝えしたいと思います。
まず「らしさ」についての定義が必要かと思いますが、自分なりに考えると「らしさ」は言語化できるものであり、多くの人が共有できるものだと考えています。
人は知っている人の行動を見たり聞いたり、感じたりしたときに「●●さんらしい」などと表現しますが、それがその人のパーソナリティであり、ある程度周りの人が予測できるその人の行動にもつながるものだと思います。
●●さんが纏っている言葉や雰囲気、発する情報から周りにいる人々が「らしさ」を感じて取っている。
Aさんは、おとなしくて格好も地味だけれど、1つのことを真面目にコツコツやることに向いていそう。
Bさんは、活発で積極的、誰とでも仲良くなれそう、きっと何か相談したら応えてくれるんじゃないかな。
ブランドや企業のらしさもこれと似ているのではないでしょうか。
提供する商品やサービスは、その人の発する言葉であり、広告やデザインはその人の見た目や性格の一部であるともいえると思います。
「らしさ」はその人が持つパーソナリティの特徴であり、周りの人が「●●さんらしい」と表現するのは、ある程度予測できる行動、すなわちデザインでいうところのトンマナ(tone&manner)に近しいという解釈も可能ではないでしょうか。
だからこそ、トンマナを定義して常に一定の「らしさ」を保って発信し続けることは、企業のブランディングとって重要な意味を持っています。
もしトンマナがバラバラな場合、人で例えると、つかみどころのないミステリアスな人、二面性のある人、多重人格、といった印象になるでしょう。
そうしたイメージがある人に、信頼感や親近感を持つことはなかなか難しいのではないでしょうか。
私たちが仕事でクライアント企業と初めて取引を開始した当初は、相手のことをあまり知りません。
コミュニケーションを重ねるしかないわけです。
その人の「らしさ」を定義するには、話をたくさんしなければわからないということも人と共通する点です。
他社との違い、その人が持つDNAを注意深く引き出します。
人だったら履歴書を読まない限り、その人のプロフィールはわかりませんが、人と違って企業には沿革や企業理念として、オープンに言語化されている情報がありますから、まずそれを知ることから始めなければなりません。
何を提供しているのか、どういう世界を創りたいのか、何を実現したいのか、企業の持つ哲学は理念体系からある程度知ることができます。
僕は「らしさ」を考案するプロセスをどこかで専門的に学んだわけでもなく、本で読んだわけでもありません。
数多くの案件に携わりながら、オリジナルで考えてきた結果ですから、どこかの先生に違うと言われそうですが、苦しんで色々経験して自分なりに感じていることを集約して定義してみたものです。
先輩や上司から考え方を教わったということもまったくなく、常にゼロから毎回考えていたという経緯です。
ですから今後も変化していくかもしれません。
今回はあくまで現時点での定義をお伝えしたいと思います。
まず「らしさ」についての定義が必要かと思いますが、自分なりに考えると「らしさ」は言語化できるものであり、多くの人が共有できるものだと考えています。
人は知っている人の行動を見たり聞いたり、感じたりしたときに「●●さんらしい」などと表現しますが、それがその人のパーソナリティであり、ある程度周りの人が予測できるその人の行動にもつながるものだと思います。
●●さんが纏っている言葉や雰囲気、発する情報から周りにいる人々が「らしさ」を感じて取っている。
Aさんは、おとなしくて格好も地味だけれど、1つのことを真面目にコツコツやることに向いていそう。
Bさんは、活発で積極的、誰とでも仲良くなれそう、きっと何か相談したら応えてくれるんじゃないかな。
ブランドや企業のらしさもこれと似ているのではないでしょうか。
提供する商品やサービスは、その人の発する言葉であり、広告やデザインはその人の見た目や性格の一部であるともいえると思います。
「らしさ」はその人が持つパーソナリティの特徴であり、周りの人が「●●さんらしい」と表現するのは、ある程度予測できる行動、すなわちデザインでいうところのトンマナ(tone&manner)に近しいという解釈も可能ではないでしょうか。
だからこそ、トンマナを定義して常に一定の「らしさ」を保って発信し続けることは、企業のブランディングとって重要な意味を持っています。
もしトンマナがバラバラな場合、人で例えると、つかみどころのないミステリアスな人、二面性のある人、多重人格、といった印象になるでしょう。
そうしたイメージがある人に、信頼感や親近感を持つことはなかなか難しいのではないでしょうか。
私たちが仕事でクライアント企業と初めて取引を開始した当初は、相手のことをあまり知りません。
コミュニケーションを重ねるしかないわけです。
その人の「らしさ」を定義するには、話をたくさんしなければわからないということも人と共通する点です。
他社との違い、その人が持つDNAを注意深く引き出します。
人だったら履歴書を読まない限り、その人のプロフィールはわかりませんが、人と違って企業には沿革や企業理念として、オープンに言語化されている情報がありますから、まずそれを知ることから始めなければなりません。
何を提供しているのか、どういう世界を創りたいのか、何を実現したいのか、企業の持つ哲学は理念体系からある程度知ることができます。

デジタルでもアナログでもアウトプットまでの思考プロセスは同じ
さて前回は、企業の「らしさ」はまず言葉で定義することから始めると書きました。
重要なことは、言葉がブランドの起点になるという点です。
あなたがデザイナーならビジュアルで定義したいと思われるかもしれませんが、ビジュアルは人によって感じ方に違いがあります。
大量のビジュアルを見てきた人とそうでない人の感じ方の差、また世代によるトレンドや個人的な趣味などの軸で判断される場合も起こり得ます。
その点、言葉はそうした人の経験値によるブレが少ない。
ビジュアルをつくるクリエイティブパーソン、ビジネスをつくるビジネスパーソン、どちらにも共通して理解される、いわば標準語のような存在だと思います。
重要なことは、言葉がブランドの起点になるという点です。
あなたがデザイナーならビジュアルで定義したいと思われるかもしれませんが、ビジュアルは人によって感じ方に違いがあります。
大量のビジュアルを見てきた人とそうでない人の感じ方の差、また世代によるトレンドや個人的な趣味などの軸で判断される場合も起こり得ます。
その点、言葉はそうした人の経験値によるブレが少ない。
ビジュアルをつくるクリエイティブパーソン、ビジネスをつくるビジネスパーソン、どちらにも共通して理解される、いわば標準語のような存在だと思います。

誰に、何を、どのように、それをまず第1に考える
ロゴを考案する、広告を作る、カタログを作る、Webサイトをつくる、すべてのクリエイティブにおいて、その企業の、ブランドの「らしさ」を定義することが必要だと思います。
では「らしさ」をつくるには、何から着手すればいいでしょう?
自分はコンセプトとキーワードを起点として考えることが多いです。
コンセプトというと大げさに聞こえますが、ここでいうコンセプトとは、前回も説明した戦略立案やマーケティングで使われることの多い、「誰に」「何を」「どのように」の3種類を主に指します。
「誰に」とは、そのサービスやツール、空間は、誰に対するものなのか?
サービスやブランドを利用、体験するのは誰なのかを定義するという、極めて当り前のことです。
当り前ではありますが、これを定義せずに考案しようとする人たちは、実は意外にも多いのです。
対象となるターゲットを定義することなくして、「らしさ」への共感は生まれにくいと思います。
「誰に」に含まれる要素は、以前は世代や性別などマスマーケティングによる発想がメインでした。
一番大きなパイをターゲットに設定すれば、売上が取れるという前提に基づく考え方です。
しかし今では、世代や性別といった属性カテゴリーだけでなく、個人が持つマインドや指向性、インサイトに対して、どれだけ深く探求できるかという点に重きが置かれる傾向にあります。
それはどれだけ共感を引き出せるかという視点に基づく考え方です。
既に属性だけで差別化できないほど、類似する商品や情報が世の中に溢れかえっているために、属性をメインとしたマーケティング手法の考えだけでは表面的で浅く、人の共感まで引き出すことが難しい状況になっていることを示しています。
個人が持つ潜在ニーズをさらに深く探ることで、本人が意識していないニーズ、こんなものがあったら欲しいという共感レベル、インサイトまで到達できることを目指します。
「何を」は、サービスや商品、ブランドによって実現したい状態を指します。
何かを提供することで、どんな価値を届けたいのかという前提で考えることが重要です。
その価値は、他と差別化されている方がよい。
ここでも仮説推論で考えることが非常に重要だと思います。
「誰に」「何を」この2つの関係性を考えるだけでも、かなり深い考察と仮説思考力が必要になりますが、この2つの関係がきちんと結ばれていれば、「らしさ」のアウトプットは近づいて来ると思います。
思考を深めて、自分に何度もなぜ?を問うこと、世の中で常に変化していく人々の感じ方をリサーチによって知っておく必要もあるかもしれません。
「何を」は、提供するサービスや商品によって、どのような生活、社会を実現したいのか、また実現できるのか、と言った視点で定義します。
3つ目の「どのように」は、デザイン的な発想が含まれます。
提供するサービスのベネフィットは何なのか?を考えることです。
大きくは機能的価値と情緒的価値の2つに分かれます。
機能的な価値は、便利であるとか、時短になるとか、リフレッシュできるとか、健康になるなどなど、商品やサービスが持つ機能的なベネフィットです。
これは色々あると思います。
一方で情緒的価値は、そのサービスや商品を利用・体験した時に自分の中に沸き起こるポジティブな感情です。
体験して沸き起こる感情は、デザインをする際のトンマナに大きな影響があります。
このあたりは次回、実際に皆さんが知っている企業の事例で説明します。
では「らしさ」をつくるには、何から着手すればいいでしょう?
自分はコンセプトとキーワードを起点として考えることが多いです。
コンセプトというと大げさに聞こえますが、ここでいうコンセプトとは、前回も説明した戦略立案やマーケティングで使われることの多い、「誰に」「何を」「どのように」の3種類を主に指します。
「誰に」とは、そのサービスやツール、空間は、誰に対するものなのか?
サービスやブランドを利用、体験するのは誰なのかを定義するという、極めて当り前のことです。
当り前ではありますが、これを定義せずに考案しようとする人たちは、実は意外にも多いのです。
対象となるターゲットを定義することなくして、「らしさ」への共感は生まれにくいと思います。
「誰に」に含まれる要素は、以前は世代や性別などマスマーケティングによる発想がメインでした。
一番大きなパイをターゲットに設定すれば、売上が取れるという前提に基づく考え方です。
しかし今では、世代や性別といった属性カテゴリーだけでなく、個人が持つマインドや指向性、インサイトに対して、どれだけ深く探求できるかという点に重きが置かれる傾向にあります。
それはどれだけ共感を引き出せるかという視点に基づく考え方です。
既に属性だけで差別化できないほど、類似する商品や情報が世の中に溢れかえっているために、属性をメインとしたマーケティング手法の考えだけでは表面的で浅く、人の共感まで引き出すことが難しい状況になっていることを示しています。
個人が持つ潜在ニーズをさらに深く探ることで、本人が意識していないニーズ、こんなものがあったら欲しいという共感レベル、インサイトまで到達できることを目指します。
「何を」は、サービスや商品、ブランドによって実現したい状態を指します。
何かを提供することで、どんな価値を届けたいのかという前提で考えることが重要です。
その価値は、他と差別化されている方がよい。
ここでも仮説推論で考えることが非常に重要だと思います。
「誰に」「何を」この2つの関係性を考えるだけでも、かなり深い考察と仮説思考力が必要になりますが、この2つの関係がきちんと結ばれていれば、「らしさ」のアウトプットは近づいて来ると思います。
思考を深めて、自分に何度もなぜ?を問うこと、世の中で常に変化していく人々の感じ方をリサーチによって知っておく必要もあるかもしれません。
「何を」は、提供するサービスや商品によって、どのような生活、社会を実現したいのか、また実現できるのか、と言った視点で定義します。
3つ目の「どのように」は、デザイン的な発想が含まれます。
提供するサービスのベネフィットは何なのか?を考えることです。
大きくは機能的価値と情緒的価値の2つに分かれます。
機能的な価値は、便利であるとか、時短になるとか、リフレッシュできるとか、健康になるなどなど、商品やサービスが持つ機能的なベネフィットです。
これは色々あると思います。
一方で情緒的価値は、そのサービスや商品を利用・体験した時に自分の中に沸き起こるポジティブな感情です。
体験して沸き起こる感情は、デザインをする際のトンマナに大きな影響があります。
このあたりは次回、実際に皆さんが知っている企業の事例で説明します。

デザインの起点となるのがキーワードです
最後にキーワードを設定します。
こちらもブランドのパーソナリティに直結する重要なワークだと思います。
人でもそうですが、気難しい、明るい、アタマがいい、ハツラツしている、チャラい、真面目などなど、その人の纏っている情報からその人を表現するキーワードはいくつか出てくると思います。
それが言葉による「らしさ」の定義につながりますが、前述した通り、企業でもそれは同じです。
このキーワードは、後の工程で「らしさ」を視覚化する際に、セルフチェックの項目としても活用します。
とても重要です。
ユニクロとH&Mはどこが違うのか?
ドコモとauは何が違うのか?
この考え方は、これらのブランドを人に置き換えると、答えやすくなると思います。
キーワードで言い表すことができるのではないでしょうか。
ビジネスマン、大人、真面目、スーツ、堅い、きっちりした男性を思い浮かべるドコモに対し、
大学生、若い、活発、フットワーク軽い、ファッション、どちらかと言えば元気な女性などをauでは思い浮かべるのではないでしょうか。
こちらもブランドのパーソナリティに直結する重要なワークだと思います。
人でもそうですが、気難しい、明るい、アタマがいい、ハツラツしている、チャラい、真面目などなど、その人の纏っている情報からその人を表現するキーワードはいくつか出てくると思います。
それが言葉による「らしさ」の定義につながりますが、前述した通り、企業でもそれは同じです。
このキーワードは、後の工程で「らしさ」を視覚化する際に、セルフチェックの項目としても活用します。
とても重要です。
ユニクロとH&Mはどこが違うのか?
ドコモとauは何が違うのか?
この考え方は、これらのブランドを人に置き換えると、答えやすくなると思います。
キーワードで言い表すことができるのではないでしょうか。
ビジネスマン、大人、真面目、スーツ、堅い、きっちりした男性を思い浮かべるドコモに対し、
大学生、若い、活発、フットワーク軽い、ファッション、どちらかと言えば元気な女性などをauでは思い浮かべるのではないでしょうか。

言葉で定義をすることは絵よりも先行する

ボディコピーは、キャッチコピーを補完説明するもの

言葉は色に置き換えることができる

たとえば先進的というキーワードであっても、人によりイメージは異なる

上からでも下からでもワンストーリーでつながっていること
そのように、企業やブランドを人として考えてみることも、キーワードを定義する時に有効だと思います。
次回はこの「らしさ」の定義に沿って、世の中にあるブランドを勝手に自分で定義してみた事例を交えて、誰でもわかるよう、なるべく簡単にお伝えしたいと思います。
企業の「らしさ」とは何か 1
https://www.dig.co.jp/blog/danwashitsu/2025/06/1-6.html
次回はこの「らしさ」の定義に沿って、世の中にあるブランドを勝手に自分で定義してみた事例を交えて、誰でもわかるよう、なるべく簡単にお伝えしたいと思います。
企業の「らしさ」とは何か 1
https://www.dig.co.jp/blog/danwashitsu/2025/06/1-6.html