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90年代リバイバルとサカナクションのデザイン

音楽
Apr 19,2018

今80年代後半~90年代前半、いわゆるバブルの時の色々なものが流行ってますよね。

僕らは仕事上、デザインのリバイバルに目が行きますが、平野ノラにはじまり、スナック菓子、ネオン、歌謡曲、フラッパー(髪型)、アメカジなどなど、いろいろなものがリバイバルの兆しを見せています。

デビュー10年目でベストアルバムを発売したサカナクション
さて、それと関係があるかどうかは置いておいて、サカナクションです。
今CMで毎日流れている「新宝島」は、みんな1度は耳にしたことがあるでしょう。
今月、サカナクション初のベストアルバムが発売になりました。
CDは海をテーマに、「浅瀬」「中層」「深海」の3枚組
サカナクションについては、以前このブログでも90年代リバイバルとして紹介しましたよね。
音も90年代ですが、その時はサカナクションが使っていたドラム=90年代始めにCCBが使っていたシモンズの六角形のドラムを取り上げました。
CCBって言っても、もうほとんどの人は知らないのかなぁ。
「ロマンチックが止まらない」っていう曲が大ヒットしたグループなんですけどね。
その曲でボーカルだったドラムの人が叩いていたのが、当時最新だったシモンズの六角形の黄色い電子ドラムだったんですが、サカナクションはそれを持ち出して使ってました。
見た時は、ココを狙ってきたかーって思いましたねーw
当時電子ドラムを使ってたのはCCB以外に、YMO(高橋幸宏)とピンクレディのトラックが有名でしょうかww



それだけではないです。
ヒットしている「新宝島」のPV、見たことありますか?
これも自分の琴線にめっちゃ触れるネタで、ココかよー!ってまた一人ニヤニヤしてしまいましたね。
「ドリフ大爆笑」のオープニングセットのパクりなんです。
全員集合と並んで、ドリフターズが出ていた90年代の大ヒットTV番組。
後ろでボンボン持って踊っているスクールメイツもそのまま。
この番組の「もしものシリーズ」が大好きでした。
「新宝島」は、そのセットに今っぽい要素をプラスした不思議なPVになってます。
これも90年代といえば、90年代のリバイバル。



サカナクションって基本ダンスミュージックなんですよね。
90年代のダンスミュージックがベースになっている。
(余談ですが、売れてる「サチモス」も、音は90年代のジャミロクァイですし)
そして今回のベスト盤を僕が買った理由。
それは曲ではなく、、、、見たいものがあったんですよね。
初回限定でついてくるブックレットです。
平林奈緒美がアートディレクションを手掛けた、カラー200ページの豪華な本。
これが90年代っぽいかというと、こっちそんなことはなくて、実に今っぽいエッジの効いたデザインです。
デザインというよりアイデアですね。
CDより原価がかかってると思われるブックレット
序章からコンセプトがスタート。研究書と書いてあります。
ベスト盤は「魚図鑑」という名前なのですが、その名の通り、初回限定ブックレットは図鑑がモチーフになっています。
英語で書かれた魚の研究書のページを(たぶん)1枚1枚スキャンして、その上に日本語を重ねて印刷する形で、全曲のデータが記載されているのです。
何度も何度も言っちゃいますが、平林奈緒美さんのデザインって紙が紙であるべき理由が、明確にそこにあっていつも唸らせます。
紙でなければ味わうことのできない体験が必ずそこにあって、紙メディアがデジタルにすべて取って代わられるという風潮を仕事で一蹴するというか、いつもそこに驚きと気づきがある。
そして、これはとても大事なことですが、保管しておきたくなる。
単なる魚ではなく、魚クションの研究書として、全曲の解説文あり
収録曲のBPM(曲のテンポ)の比較。さも研究レポートのようなグラフィック
今回は図鑑というテーマが重要ですが、それを細部のディテールにも表現されている。
特にグラフィックの図版の表現に、「らしい」特徴が見られます。
墨溜まり、網点など、活版に見られるデザインエレメントが随所にあって、なんだか懐かしい気持ちに。
マジックでタイトルが殴り書きされている表紙にも、昔の印刷によく見られたインクのにじみが表現されていて、そんなディテールを見るのも楽しいです。
括弧にある活版のようなスミ溜まり、そして版ズレとドットの効果。
網点の図版が昔の数学の教科書に載っていた設問のようです。
しかしCDの制作費にこんなにお金をかけるのってやはりスゴイ。
同じく平林さんがシリーズでデザインしているユナイテッドアローズのカタログを紹介した際にも、またniko and…のカタログを紹介した時にも言いましたが、そこにお金をかける意味はあると思います。
必ず紙でしか表現できない驚きが詰まっているのです。

今どき、バンドはフェスに出て支持されなければ売れないという風潮があるようですね。
音楽好きだけでなく、つながりたい症候群の人達が、みんなフェスに集まるのです。
しかし、以前はフェスに出なければ、バンドや音楽が売れないということはなかったはず。
そこにはフェスで生のパフォーマンスを見て、他のバンドと比較できるという「体験」があるから人が集まる→楽曲を購入するというステップがあるのかもしれません。
ではフェスに行かすに、CDやデジタル音源を聞く体験はどうあるべきか?
パフォーマンスに代わる、凝ったブックレットを見ながら音を聞く、というのも1つの新しい体験価値を提示していると思いました。

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松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
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