談話室松本をリニューアルしました。
これまでの談話室松本はこちらからチェックできます

  1. top
  2. 仕事
  3. 創業70年 老舗ブランドのロゴリニューアル

創業70年 老舗ブランドのロゴリニューアル

仕事
Jun 07,2018

常に現れては消えていく新しい消費動向、それに呼応するように移り変わるファッショントレンド。

老舗企業であっても、消費者の嗜好変化を敏感に察知し、革新を繰り返していかなければ長く生き残ることはできません。

今回は老舗企業のロゴリニューアルの事例を紹介したいと思います。

創業70年の老舗ブランドのロゴをリニューアルしました
女子の皆さんは「銀座かねまつ」というブランドについて、たぶん聞いたことがあると思います。
シューズ&バッグの老舗ブランドですね。
銀座6丁目にある店舗が有名です。
1947年の創業なので、もう70年以上続いているブランドになります。
毎回のように言ってますが、うちの会社は営業活動をまったくしていないので(汗)、初めてブランドの方たちにお会いしたのが3社コンペに呼ばれた6年くらい前でした。
そのコンペに勝って取引が無事スタート。
そこから現在まで、紙の販促ツールをはじめ、ECサイトの構築も手掛けています。
現在全店で使われている銀座かねまつのロゴ
上段が上質を愛するコンサバフェミニン女子、下段がリラックスカジュアル。 ワンピースやスカート着用率が減少し、オーバーサイズのパンツが増加。 服装の変化と合わせてシューズもパンプスからフラットシューズ、そしてスニーカーに。
今回も3社コンペでした。
呼ばれたオリエンで伺った内容は以下のようなもの。
「銀座かねまつ」に対して消費者が抱くイメージは、高級、老舗、伝統、銀座などであり、今支持されている収益性が高い商業施設=たとえばルミネなどの来館客層とは乖離が出ているということ。
銀座の高級感を抑え、トレンド感を強化するためにブランドコンセプトを見直し、ロゴも変えていきたいという要件でした。
簡単に言うと、従来のコンサバエレガンスから、トレンドの流れを汲んだリラックスカジュアルへ少しづつシフトさせたいということだと思います。
横浜ルミネに1号店がオープンしています
そのお題を受けて考えたことは3つ。
10年以上ずっと右肩上がりのルミネの売上を牽引しているのは何か?
調べていくと、セレクトショップの誘致がルミネの快進撃を支えていることがわかりました。
中でもユナイテッドアローズが最初にルミネ(横浜)に出店したのが1999年。
そこからルミネとUAの右肩上がりの売上推移が見事に一致しているのです。
セレクトショップの客層をうまく捉えて収益を伸ばしたのがルミネだったということでしょう。
そう考えると、セレクトショップの店づくりの施策は1つのヒントになるはず。
そんな折、ユナイテッドアローズのルミネ横浜店が18年ぶりにリニューアル。
ここで書くと長くなってしまうので割愛しますが、UAの戦略を分析すれば、消費者のニーズの変化、それに対する次の一手が見えてくるはずだと感じていました。

「銀座かねまつ」の別ラインとして「POOL SIDE」という、かねまつより若年層向けの安価なブランドがあります。
こちらはどちらかというとルミネの顧客層に近い。
しかし、いただいたお題はあくまで「銀座かねまつ」のリブランディングであり、かねまつがルミネのような収益性の高い商業施設でも戦えるようにチューニングすることでした。
ですから、かねまつのDNAを残しながら、ルミネの編集感を持ちこむことが必要で、もっと言うとセンス面でセレクトショップと同レベルの感性を持ち、障壁なく買い回りができるようなショップを目指す必要があると思いました。
その意味では、ルミネより客単価の高いNEWoMANに出店しているセレクトショップ群のロゴもベンチマークとして分析対象としました。
ここ数年、セレクトショップが別展開する新しいブランドのロゴ。共通するのはサンセリフ系のシンプルなロゴが多いということ。
3つ目は、かねまつのDNAって何なのだろう?ということです。
これは持論かもしれませんが、必ず企業の成り立ちに創作のヒントがあると思っています。
かねまつの50年の歩みを記した周年誌「アンサンブルの美学」も読み込みました。
また同じような事例として、創業168年目にロゴを変更したスペインの老舗ロエベ。
そしてUAと同じく、ロゴのリニューアル1店舗目を横浜ルミネからスタートさせたナノユニバースの事例も参考にしました。
創業当初から続くロゴに込められた想い
ロエベのロゴリニューアルのアプローチは参考になりました。
過去から現在まで使われてきた様々なロゴのエレメントを活かしながら、新しい要素を加えること。
それはかねまつの周年誌に出てくる言葉「旧いものは新しい」の理念に基づいた変革のコンセプトを体現しようとした提案でした。
社長へのプレゼンテーションを経て、最終的には、1960年に考案されたkのマークを基本とした方向性に絞り込まれていきます。
ブランド名は「銀座かねまつ」ですが、銀座をあえて表記しない方針に。 70年の歴史、現在のロゴが持つイメージも踏襲しつつ新しいエッセンスを加えています。 既存ブランドを想起させながらも、新しい要素も同時に感じさせるバランスに。
まず求められたのはロゴでしたが、インテリアデザイン、壁紙、ショッパーなど様々なツールも提案しました。
ロゴは単体で成立するものではなく、店舗の空間インテリア含めたブランディング全体の中の1つの要素として扱うことで、イメージが増幅されるという視点で、たくさんの事例も出して説明しました。
結果、3社の中からうちの会社の提案を選んでいただきました。
新しいロゴを使った最初の店舗は、横浜ルミネ内に既にオープンしています。
でもロゴ含め、採用頂いたのは提案全体の40%くらいだったように思います。
もっともっとやった方がいいと感じていたこと、やりたいこともありました。
横浜に行かれる機会がありましたら是非
予算、時間、認識の違い、歴史の重み、いろいろな制約を乗り越えるのが仕事です。
もちろん先方の事情もありますが、自分の力不足も感じましたね。
もっともっと実績を積んで、もっと技術を磨いて、これから先も頑張っていきたい。
そんなことを感じたプロジェクトだったように思います。

SHARE THIS STORY

Recent Entry

松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
    青山ブックセンター