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空間、ショップツール、Web、ロゴ、その先にあるもの

仕事
Mar 16,2020

オフィスのデザインが、そこで働くスタッフのモチベーションやクリエイティビティに影響を与える、そういう話がここ20年くらい、色々な媒体でたくさん言われてきました。

たくさんの植物をオフィスに入れたり、自分のデスクを持たないフリーアクセス、立ったままでの打ち合わせスタイル、家具屋のショールームのようなエントランス、カフェのようなミーティングルーム、そして大手企業が競い合う社食のメニュー。。。。

しかし、新しく出てきたシェアオフィスやリモートワークという考えが、こうした今までの働く環境の考えを塗り替える日も近いかもしれません。

働く場所はどこでもいいのですから、オンとオフのボーダーもない。

むしろ、変わらなければならないのは、働くことへの固定的な考え方でしょう。

本当にどこでも働けるという日が近いなら、オフィスはどうあるべきか?

もしかすると、尖った人材の採用を目的とした、代理店のオフィスのような広告的な表層より、シンプルで何もない、都度変わる用途に合わせて常に組み換え可能な匿名的空間の方がいいのかもしれない。

そんなことも感じます。

6つのスペインブランドを扱うロゴを作りました
さて最近、オフィスのリニューアルを担当させていただきました。
以前このブログでも紹介したスペインの高級水着ブランドTCNを展開する商社のオフィスです。
今までTCNの店舗設計、ポップアップショップの内装、サイン、ショッパー、オリジナルハンガー、グラフィックの分野では、領収書、名刺、各種封筒、レターヘッド、LOOKBOOK、パネル、Webサイトなどなど、空間から紙、デジタルまで様々なツールをワンストップでデザインさせていただいてきた経緯があります。
https://www.dig.co.jp/blog/danwashitsu/2019/03/post-56.html

今回TCN以外の別のアパレルブランドも、スペインから輸入取引を開始することになったので、オフィスも新しく青山に構えられるとのことで、その内装をやって欲しいというお話でした。
白とライトグレーだけのオフィスは、品の良いストイックさ
今回はオープンなショールームではなく、場所もビルの5階ということを考慮して、表層のアイキャッチではなく、前述したようにオフィス機能を優先したシンプルな匿名性のある空間として考えました。
とはいえ、高級ブランドも扱うファッションオフィスであることのアイキャッチも必要だと思い、照明器具のみに少しキャラクターを持たせています。
すべての家具をグレーと白の2色に押さえて落ち着いた空間に仕上げました。
・キャビネットと社長デスクはスイスのハラーシステムのグレーで統一
・社長の椅子はアーロンチェア、スタッフの椅子はメダチェア、どちらもグレー
・オーダーブラインドとスタッフデスクはどちらも白で
・ミーティングテーブルはカッシーナのRITMO 6人掛けで白
・ミーティングチェアはB&Bから深澤直人デザインのグレー
・照明はフリッツハンセンからカラヴァッジョのグレー

先行する水着ブランドのTCN含めて、取り扱うスペインブランドが6つに増えたために、それらの総称をUNO DOS TRES(ウノドストレス=スペイン語で123の意味)として、オンライストアの構築も担当させていただきました。
サインプレートはデザインから施工までを担当
照明はマットグレーが美しいフリッツハンセンのペンダントに
すべてうちの会社で作らせていただいている紙ツールが置かれています
こうした仕事をしていて、最近常に思うことがあります。
以前ならロゴや名刺はデザイン事務所、WebはWebの制作会社、空間は設計事務所、売り方はマーケティングコンサル会社が行うものとして、担当する専門分野があらかじめ決まっていました。
もうそのような取り組み方では、企業側が望むミッションは実現できないところまで来ていると感じています。
ロゴを刷新してそれが話題になれば、売上につながると思われてきましたが、今日ロゴのデザインはあまり意味を持たなくなってきています。
重要なことは、ロゴを作り上げるまでのプロセスをメンバー間で、いかに共有することができるか、それを未来に向かって機能させることができるかにかかっている。
一番重要なことは言うまでもなく、企業活動であり、そのために全員が共通の価値観を持ってゴールへ向かって進んでいることのみに意味がある。
123のオンラインストアも構築しました。
ロゴを作る機会は、自分たちの活動を見直し、ブレないことを全員が共通価値として強く共通認識できるまたとない機会なのです。
ロゴは企業活動を表現したビジョンである必要がありますが、一方で旗印に過ぎない一面があります。
以前のように、旗印で商品やサービスを選ぶ時代は終わりました。
ユーザは、常に総合的に企業活動を見て、その企業を評価しています。
購買行動のすべてのコンタクトポイントで、統一されたデザインマネジメントを行うことはもはや当たり前になり、それらを通してユーザは、一貫した企業活動がどのように行われているかを見ているのです。
ですからロゴを作ることは、企業の存在意義を明確にし、社員全員がそれをより強く認識し、未来への企業活動をより強固にするための「行くぜ」という旗印をつくる行為なのだと思います。
終わりではなく、開始です。
今回担当させていただいた空間、ツール、デジタルツールがすべての企業活動に結び付き、より強固でアクティブな活動につながることが我々に求められるミッションです。
その意味では、言われたことをデザインするだけのデザイナーは存在する意味がなくなりつつある。
企業活動を視野に入れたコンサルティングやマーケティング領域まで、越境した視野を持ち、アウトプットできる人材が必要不可欠な時代に入ったことを意味しています。

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松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
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