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ラグジュアリーだけでは足りないの?

ファッション
Jun 17,2021

前回吉祥寺のハモニカ横丁にある「みんみん」を紹介した際に、

吉祥寺でバイトしていた大学生時代のこと、

そして「みんみん」の向かい側にある輸入衣料店「ウェスト」のことに触れました。

パルコの隣にあるファンキーでチョコレートケーキを食べるのと同じくらい、何も欲しいものがないのに、よく行った店です。

色違いで3種類くらいは持っていたSAINT JAMES
前回も書きましたが、何十年ぶりに「ウェスト」行ってみて、やっぱり何も欲しいものがなかったにも関わらず、セントジェイムスのボーダーのニットを買ってしまった。
このセントジェイムスというブランド、
これがまた自分にとっては、なくてはならない青春のブランドでした。
大学の時にバイトしてた吉祥寺で、20代前半よく着ていたシャツを買う。
いったいどんだけ追体験するんだよって感じですけど。
Style Council時代、カフェブリュCafé BleuのPaul Wellerがお手本だった
20代の時にはフレンチカジュアルというジャンルが大流行していて、
その中でも、もっとも有名なのが agnès b.(アニエスベー)でした。
パリのレアールに本店があって、全盛の頃に僕も行きましたけど、
一世を風靡したスナップボタンのカーディガンなど、どちらかというと女子に大絶賛されたブランドで、今じゃ考えられないですが、伊勢丹1階の入口脇の一番よい場所にデカいショップを構えて、毎週大混雑していました。
パリのリセエンヌに憧れていた、日本のオリーブ少女たちの心を鷲掴みです。
ベレー帽にホワイトリーバイスで、カヒミ・カリー、時にはカジヒデキを聞く女子たち。
フレンチはもちろんメンズの間でも大流行していて、紺ブレにホワイトリーバイス、素足にローファーというのが定番でした。
男子のお手本は、なぜか英国人のポール・ウェラー。
デニムにボーダーシャツ、紺ブレ、そしてステンカラーコートです。
Old England、エミスフェール、ハリス、シマロン、ピカデリー、ハートフォードなど、当時次々とフレンチブランドがフランスから上陸してきました。
同じくStyle CouncilのParisでミックタルボットが紺ブレの下に着ているのは…
じゃ紺ブレの下には何を着たのか??
その時のマストアイテムがSAINT JAMES(セント・ジェイムス)です。
首の広いボートネック、細いピッチの横縞ボーダー、色のバリエーションも豊富。
代官山の駅前にお店がありました(まだあるのかな?今は白金にありますが)。
ボーダーシャツには、御三家があって、
その筆頭がSAINT JAMES、そしてLe minor(ミノア)、3つめがORCIVAL(オーシバル)、
すべてがフランスで生産されている生粋のフレンチブランドです。
もともとは漁師や船乗りの仕事服として生まれ、後にフランス海軍の制服としても採用される由緒正しきマリンアイテム。
その中でも一番有名なSAINT JAMESは、フランス北部ノルマンディー地方で、1889年に創業、
自分もこのブランド、よく着たものです。
一番右に立つPaul Wellerは、やはりダブルの紺ブレにボーダーシャツ
24歳の時にやってたバンドのレコードジャケット。ダブルの紺ブレにSAINT JAMES、恥ずかしい。
しかし欠点、というか自分にはどうしても合わない点があり。。。
それはサイズでした。
一番大きなサイズを買っても、コットン100%の素材は、洗うとかなり縮むので、腕が短くなり、袖がツンツルテンになってしまうのです。
それがわかっていながら無理して新しいのを買って、その度にまたツンツルテンになってしまった、、と後悔&我慢をしながら着たものです。
あとは首の広いボートネックを素肌に着るのにも若干の抵抗があって、必ずスカーフをするか、中に白いポロシャツを着たものでした。
ピカソが愛したバスクボーダーシャツ。モダンですねぇ。
そんなことがうっすら記憶の隅にありながらも、
ハモニカ横丁の「ウェスト」で全色が揃っているのを見ていたら、買いたくなり買ってしまった。
普通のボーダーではなくて、ピカソが愛した変則的なボーダー柄のNAVAL(ナヴァル)のシリーズです。
普通のボーダーは当時何度も着てたけれど、このピカソのバスクシャツは密かに憧れつつ、着たことはありませんでした。
でもやはりSAINT JAMES、変わってません。
最初はいいんです。
でも1回洗ったら速攻で袖が短くなり、、、w
一番大きなサイズを買っても、やっぱり変わってないなぁと。
フランス人ってこんなに腕が短いの?
上はSAINT JAMES、下がCIOTA
今年は90年代への回帰でボーダーニットが流行しています。
フレンチカジュアルはそうでもないけど、なぜかボーダーニットだけ流行っている。
袖が短くなってしまったSAINT JAMESは、リンタロにあげることにしてw、
それでもやっぱり、ボーダーが欲しいので探すことにしました。
探すと、あるにはあるんですけど、袖の長さ、素材、デザインなど色々な問題があり。
見つけたのが、CIOTAという国内ブランドのボーダーです。
CIOTAは岡山にある縫製工場。
スビンコットンを使用した質のよいベーシックなアイテムを数多く作っているブランド。
このボーダーもスビンコットンの素材を吊り機でゆっくり編んだもの。
素材からこだわって作っているので、クオリティがとても高いのが特徴です。
CIOTAは着心地、触り心地、素晴らしいクオリティ
ゆったり着られてサイズの心配もない。
生地から作っているので、素敵な着心地。
とてもラグジュアリーな気持ちにもなれるのですが、
フレンチでも、90年代でもないwww
ましてやマリンでもない。
スタイルは踏襲しているけど、まったくの別モノです。
実に今っぽい、Made in Japanによる真摯なモノづくりに向き合ったアイテム。
YAECAやLoopwheelerに近いでしょうか。

そう考えると、不便なことが愛おしく、不便であったからこそ愛してたのかもしれない、
と考える自分を見つけることもできるのです。
これは単なるノスタルジーなのか?
人は欲張りですね。
とはいえ、オジサンがツンツルテンを着ているというのも、ちょっと恥ずかしいですが。

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松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
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