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身の回りのデザインから何を得る?

インテリア
Jun 01,2022

今採用活動をしていて、たくさんの方にお会いしているのですが、

その中で聞かれた質問があります。

「最近注目しているデザインは何ですか?」

もしあなたが面接官をしていて、この質問をされたら何と答えますか?

購入した月兎印のステンレススリムポットはピカピカです
簡単に答えられそうで、実はなかなか答えられない質問だと思います。
質問する側は純粋に働くクリエーターとして、
デザインについてどのように考えているのか、
素直に聞きたくて振り出した質問だと思いますが、
答える側はあらかじめ準備をしていないと、すぐに回答しにくい質問でしょうね。
実際に質問されたうちのスタッフも回答に窮していました。
THEは、プロダクトもさることながらパッケージが魅力です
自分はその時、感じたことをそのまま回答しましたが、
その背景には以下のような考察があります。
デザインで商品やサービスにどこまで付加価値を持たせることができるか、
どこまで消費に貢献できるのか?
その視点は、デザインを仕事にする上での1つのテーマであり、
価格も品質もほぼ同じ2つの商品が並んでいた際に、
デザインが購買要因にどこまでなり得るのか?
という自分への問いでもあります。

デザインとは課題の発見~解決です。
であれば、人間の持つ無意識の課題を最適解として解いた答えがデザインであるはず。
結果として作られたアウトプットのデザインには、ハッとさせる力があるはずなのです。
日常で何気なく見ているデザインに引っかかりがあること。
それこそがデザインが持つ力のように思います。
とはいえ、課題の解決は目立って主張する必要は決してなく、
時に日常に溶け込む匿名的なデザインであるべきですが、
それを見逃さないというのが、僕らクリエーターのモノを見る目であると思っています。
人が無意識に触れるデザインに着目し、最適解であればあるほど、見る側に引っかかりがある。
デザインを見る目はそうあるべきだという前提も踏まえて、見た際の引っかかりを感じるということです。
簡単に言うとLPのジャケ買いは成り立つのか?という視点に近いです。
デザイナーが運営するショップなのでデザインが見せ場。
今はVUCAの時代。
多様性を認め、消費ニーズが細分化する中で、
他との差別化を担っていたデザインもわかりにくいものになっています。
膨大な情報があふれる中で、自分はどっちを向けばよいのか、
何が正しいのかもわからなくなりつつある時代になり、
選ぶ基準も見えずらくなりました。
そんな中で、先日このブログでも紹介した民藝の柳宋悦のような、
あるいは安土桃山時代に美を唱えた千利休のような、
キュレーションしてくれる人を時代は求めているのかもしれません。
キラリと光るデザインがある。
時代の半歩先へデザインが牽引してくれると言ってもよいでしょう。
カトラリーシリーズもパッケージがカラーチップのよう
「最近注目しているデザインは何ですか?」
それに対して、咄嗟に答えた自分の回答を紹介しますね。
1つは水野学がディレクションしている「THE」です。
一番最初にKITTEに1号店がオープンした時から気になっていました。
水野学はデザインだけでなく、中川政七商店の中川さんと一緒に
「THE」の経営にも携わっています。

「THE」は、いわゆるセレクトショップですが、
そのコンセプトは「THE」というワードが示す通り、
普通、王道、ど真ん中です。
たとえば「デニムと言えば何のブランドを想い浮かべますか?」という質問に
多くの人はリーバイスと答えるでしょう。
そのように、このお店は「世の中の定番」を各ジャンルから集めたショップです。
お店も「THE SHOP」ですが、扱っている商品すべてに「THE」がついている。
「THE CUTLERY」「THE TOWEL」「THE GLASS」これらが商品名なのです。
ストーリーから語り出す、コンセプトショップなんですね。
水野学を知らない人でも、また彼がこのお店に関わっていることを知らない人でも
商品を見た際、デザインに引っかかりを感じるでしょう。
プロダクトよりパッケージデザインや、ストーリーに惹かれるはず。
デザインの力が商品の魅力、興味喚起、購買欲を引き出している。
デザインがキュレーションしている好例だと思います。
「THE SHOP」は彼のデザインのプレゼンテーションの場です。
見ていると、つい欲しくなってしまう。
会社から歩いていける代々木公園にあるお店
もう1つは最近会社の近くにできた新しいライフスタイルショップ、
「LOST AND FOUND」です。
ここも「THE SHOP」同様、いわゆる日用品の定番を集めていますが、
経営は石川県にある創業115年の企業、NIKKOが運営しています。
そのため店の面積の半分では、NIKKOの商品を販売しています。
NIKKOは食器メーカーで、とても美しい白磁のテーブルウェアで知られていますね。
基本は卸ですが、数年前に銀座に路面店を出しました。
それに続く「LOST AND FOUND」は、吉祥寺からスタートして、
これまた数年前に代々木上原に進出してきたROUNDABOUTとコラボしたショップです。
ボーンチャイナの食器がたくさんあります
陶器だけが置いてある部屋は、工場のようなインテリア。
NIKKOの食器はよいのですが、値段は結構高くて、、、自家用というより、
ギフトニーズの方がマッチすると思います。
日用品のスペースには、キャンプツールや箒、石鹸、タワシまで、色々なものが置いてあります。
でも1つ1つこだわりがあって素敵です。
見ていて、LONDONのショーディッチにある「LABOUR AND WAIT」を思い出しました。
似てます。
「LABOUR AND WAIT」は4年くらい前に初上陸して千駄ヶ谷にお店を開きましたね。
「LABOUR AND WAIT」にそっくりなカウンター
さてこの「LOST AND FOUND」品揃えも魅力的なのですが、
お店のロゴをはじめ、パッケージデザインに惹かれます。
決してお金はかけておらず、そこにあるのは感性のみです。
時代にジャストで合わせてくる力を感じます。
そう、引っかかるのです。
日常の中でこの引っかかるという感じはとても重要です。
見て3秒くらいでビビっと感じさせるのは、デザインの力に他ならない。
3秒で何かを感じさせるデザインをアウトプットできる感性、
時代の半歩先を行く課題解決としてのアウトプットができる力、
それはデザイナーが持つ才能だと思います。
センスが良いということは、最適解を出せること
誰だろう?
デザイナーは平林奈緒美さんということがわかり、
大きく、ホントに大きく納得しました。
彼女の手掛けたロゴ、YAECA、THREE、la kagu、すべてに共通して感じること。
いま企業や世の中が求めていること、
それに対してデザインで最適解をアウトプットする。
これぞジャケ買いの正体なのです。
デザインが付加価値になる。
30年前の自宅のキッチンにも映えるステンレススリムポット
私たちがやるべきは最適解のアウトプット。
力のあるデザインは、誰が作ったかではなく、
誰の手によるデザインかを知らなくても見た瞬間に感じるものですね。

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松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
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