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江口寿史展 情熱と幸せ

クリエーター
Jul 25,2023

何かに凝ったり狂ったりしたことがあるかい?

たとえば、それがミック・ジャガーでも、アンティークの時計でも

どこかの安いバーボンのウイスキーでも。

そうさ、何かに凝らなくてはダメだ。

狂ったように凝れば凝るほど、君は1人の人間として幸せな道を歩いているだろう

雑誌東京人の表紙になったイラストですね(購入済)。
かまやつひろしさんが、1975年に歌った「ゴロワーズを吸ったことがあるかい?」の歌詞の一節です。
僕の大好きな歌なんですが、この詩、深いと思いませんか?
何か好きなことに没頭すればするほど、自分が幸せになれる。
オタクな行動を謳った内容とも解釈できますが、この詩はまったくその通りだと思うんです。
今まで何度もこの詩を思い出すときがあって、都度やっぱりその通りだなぁと感じてきました。
どういう時に感じたかは、また機会があれば話すことにしましょう。
大瀧詠一さんとシティポップ
自分はカルチャーで育ちました。
好きなカルチャーを求め続けているだけで、ホントに自分は幸せなのです。
大学でも学生たちにこう話しています。
自分の好きなことを見つけて、やり続けること。
それは何でもいい。必要なことはそこに意味を見出すことだ。
スポーツでも、本でも、映画でもいい。
好きで仕方がないことを仕事にできればベストだが、必ずしもそれを仕事にしなくてもいい。
やめずにそれをやり続けることが大切だ。
やり続けていれば、自分が窮地に追い込まれた時でも、きっとそれが自分を助けてくれる。
好きなことをやめるなよ、探し続けて、それをやり続けるべきだ、とね。
これはたまらないアンナミラーズの原画。また行きたいなぁ、、、
自分が鼓舞される瞬間は、やっぱり何かのカルチャーに触れたとき。
それをやめてしまったら、本当につまらない人生になってしまう。
20代の時に触れて衝撃を受けたもの、その体験を続けたくて、ずっと探しているのかもしれないとも思います。
仕事もそうだし、音楽も、デザインも。
だから振り返ると、20代で衝撃を受ける対象に出会えたことがとても重要だったと思うんです。
自分にとっては、カルチャーとの出会いこそがそうだった。
原画で知ったけど、バラバラに描いて組み合わせるんですね。
描かれる女の子は、カワイイだけでなくセルフィッシュな要素があって好きです
さて、また前置きが長くなりましたけど、先日江口寿史展に行ってきました。
会場は吉祥寺のギャラリー創ですが、吉祥寺と言えば江口さんが住んでいる場所として広く知られています。
シャッターに江口さん直筆のイラストが描かれている「闇太郎」も有名ですね。
今回は出版を記念しての展覧会でしたが、地元で開催するなんて、なんだか特別感があって良い企画。
都会でも田舎でもない、思い出せば学生時代によく遊んだ、バイトもしていた吉祥寺。
熊本から上京してきた江口さんがずっと住んでいる街。
若い人は知らないでしょうけれど、江口さんのデビューは漫画(少年ジャンプ)でした。
でも今は何と言っても美人画でしょう。
「ストップ!ひばりくん(1981)」を知らなくても、江口さんの描くカワイイ女の子の絵はきっとどこかで見たことがあるはず。
江口さんが漫画家として活躍したのは主に80~90年代。
現在、世界が注目する80年代の日本のシティポップのリバイバルも相まって、江口さんの人気も高まっているのではないかと思います。
しかし永井博、鈴木英人、わたせせいぞう、原田治など、80年代に活躍したシティポップ系のイラストレーターや漫画家たちと違うのは、マンガ、イラスト、アート、現代美術、江口さんはどのカテゴリーにも当てはまる、POPカルチャーをもっとも体現している存在と言える点ではないかと。
80~90年代の日本のポップアートと言えば、ペーター佐藤や山口はるみ、湯村輝彦&タラ、吉田カツたちがいたけれど、彼らよりももっとサブカルで、消費文化の近くにいながらも色あせない、それが江口さんのような気がします。
デビューしたのが19歳で若かったこともあるかもしれませんが、80年代リバイバルという括りだけでは終わらない、67歳になっても色あせない、ずっと「今」の人というイメージがあります。
父と一緒に活動した漫画家の仲間で、同じく少女漫画で知られる高橋真琴さんのように(現在88歳でも現役)、ずっと美人画を描き続けるのかなぁ。
同級生の友人??江口さん、67歳とは思えないです・・・・
江口さんのファン層は40代後半の女性をコアに、若い女子が多いのかなぁと思っていたけど、以外にも50代のオジサンも多くて、ちょっとそこにはビックリしました・・・・
オジサンは江口さんの描くカワイイ女の子が好きだから会場に????
まぁ事実、描く女の子はすごく可愛いですけど、ちょっとナゾでした。
ストーリーマンガを描かなくなって、美人画のイラストがメインになったのは、そもそもカワイイ女の子が好きで(奥さんは元アイドル)、絵が上手いという2つの才能が重なるところが大きいと思っていたんですが、ご本人は画力がないのでストーリーに力を入れるしかなかった、とインタビューで語っており、ここは意外な点でしたね。
自身の画力のなさへの自覚が自己を鍛錬に向かわせ、今につながっているのだと思います。
でも自分が思うに、そもそもカワイイ女の子が好き、絵を描くのが好き、この2つへの集中と情熱が、今の江口さんを形成しているように見えます。
そしてカルチャーが好きってことも(ココ大事)。
そうでなかればポップは生まれないと思っています。
もちろん作品集は買わせていただき、サインももらいました
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そうさ、何かに凝らなくてはダメだ。
狂ったように凝れば凝るほど、君は1人の人間として幸せな道を歩いているだろう
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自分が好きなものを見つけて続けた方がいい。
そしてそれはできるだけ早い段階で見つけた方がいい。
それをやればやるほど、幸せな人生になるはず。
9月に世田谷美術館で大きな展覧会も予定されていますから、楽しみにしていましょうね。

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松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
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