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宇治野宗輝 現代美術で生きていく

クリエーター
Aug 02,2023

現代美術を鑑賞するっていう行為は、印象派の展示を見るのと違ってなかなかハードル高いですよね?

これ見て「お前この作品の良さを理解できないの?」って誰かに言われちゃうんじゃないかと、

いえ、言われなくても自問してしまうのじゃないかと、それでビビッてハードルが上がってしまうというのが、理由としてあると思います。

でもそんなことはないのです。

みんな気軽に見て、何かを感じればよいのです。

アボガドとキュウリとサーモンの入ったカリフォルニアロール。
今回は自分の友人である現代美術家、宇治野宗輝の作品を紹介します。
彼と出会ったのは、まだ自分が20代の頃。
当時、自分の大学の後輩にGO GO3という、60年代のガールズバンドをやっている女子がいて、その子に頼まれて、そのガールズバンドの演奏でスタジオに入った時でした。
「ベースは芸大の宇治野君です」と紹介されたのが初対面。
お互い、別にそのバンドが好きではなくて(笑)まぁ、テキトーにやっていたんですが、そのスタンスも彼と合っていて仲良くなりました。
これが「Roatators」という作品、自動演奏します。
バンドには、自分の後輩の女子とは別に、もう1人女子がいて、その子は多摩美で佐藤可士和の彼女だった。
3つの美大のメンバーからなるアートスクールなバンドでした。
まぁメンズはやる気もないので、早々にそのバンドからは抜けましたが、その後も宇治野との交流は続きます。
彼は佐藤可士和と同じ予備校だったこともあって友人なので、そのバンドを抜けたあと、3人でスタジオに入って演奏したこともあったなぁ。
彼はインテリジェンスがあり、それだけでなく笑いのセンスもあって、話す内容がとても面白い人なんです。
時々冗談なのか、本気で言っているのか、わからない時がある。
だからアート活動も、これは冗談なのか?と周りの人が勘違いするようなこともやっているけど、作家本人は物凄く真面目に取り組んでいるという、そのボーダーが面白くて実に彼らしい。
当時からデコトラ(デコレーショントラック)の電飾や、学ランという、海外にはない日本固有の文化をアートに転用していました。
ハプニングアートというコンセプトで銀座のど真ん中で白昼、学ランを着てデコラティブな神輿に乗ってわっしょいわっしょい担がれた彼の姿が、新聞に掲載されたりしてね。
でも本人は、極めてマジメにやっているのです。
作品「Loveアーム」を持った宇治野氏。
一緒にクラブで朝まで大きなイベントをやったこともありました。
真夏の夜、新宿の大きなクラブで開催した「浴衣GROOVE」というイベント。
主催者側は全員浴衣を着用、客が浴衣を着てきたらドリンク無料。
自分は主催者としてDJを担当、宇治野はブラックライトで光るオリジナルの壁紙を作って大量に出力し、それをクラブの壁じゅうに貼ると、壁が変形してゆがんだ不思議な空間に。
自身はその柄を布にプリントして作った浴衣を着て参加してました。
楽しかったなぁ。
野宮真貴さんたちと組んでいるバンドユニット
こちらは本人に描いてもらった作品。会社に飾ってます。
最近では、ピチカートファイブの野宮真貴さんとバンドとやってます。
「トーキョーの夜は7時」の、あの野宮真貴さんです。
彼はベースか?といえばそうではなく、Loveアームというオリジナルの楽器(作品)で演奏に参加しています。
現代美術と渋谷系の融合ですね。
うちの会社の3階にあった自社のギャラリーでも1週間、彼の作品展示をやらせてもらって、演奏もしてもらいました。
イベントのあと、スタッフみんなの前で、自身の現代美術について語ってくれた。
今思えば、贅沢な時間でした。
最近の宇治野氏の作品は映像に傾倒しています。ムサビで講義あり。
その昔からの友人が、寺田倉庫で個展をやるというので見に行ってきました。
1960年代以降、アメリカから入って来た大量生産の輸入品とカルチャー。
その影響を受けて変容した日本文化というのが、ずっと長い間の彼の作品テーマでもあります。
幼いころからプラスチックを愛してやまない彼ですが、今回初めてチャレンジしたという絵画作品では、カリフォルニアロール寿司をモチーフにしています。
いたって真面目に取り組んで描いている。
寿司というフォーマットは踏襲しているけど、日本発ではない食べ物。
これも変容した文化のメタファーですね
そして、100歳になるというお母さんへのインタビューが作品のキーになっていました。
満州で生まれ、戦後日本に引き揚げてくるまでに体験したことが作品のベースになっています。
お母さんのインタビューのビデオ映像に、サウンドスカルプチャーと呼ばれる、20世紀の家電、工業製品を使って作られた自作の楽器?装置?インスタレーションが組み合わさって、映像と演奏がクロスオーバーする展示になっていました。
彼の展示は沢山見てきましたが、いつも同様、面白かった。
こちらはカリフォルニアではなく、フィラデルフィア寿司とのことでした。
重要なことは、彼はこれを生業としているということです。
こんなユニークで、ナイスな生き方がある。
インテリジェンスがあって、ユニークな彼をずっと応援したいと思っています。

宇治野宗輝の個展「Lost Frontier」は天王洲にあるTerrada Art Complex 4F、ANOMALYで8/5まで開催中です。

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松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
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