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再々ソール・ライター これはマジで行くべし

クリエーター
Aug 14,2023

今BUNKAMURAで開催されているソール・ライター展に行ってきました。

いやぁめちゃ良かった。

生誕100年を記念した大規模な回顧展。

写真がそんなに好きじゃなくても絶対楽しめると思いますよ。

60年代のNYの日常の情景を伝えるカラー作品
そもそもソール・ライターという、アメリカ人のカメラマンを初めて知ったのもBUNKAMURAでした。
BUNKAMURAでは、ソール・ライターの展示を過去2回開催していて、1回目が開かれたのが2017年。
この最初の展示を見に行って、すっかりやられてしまいました。
その構図の取り方、そして都会で生活する人々というテーマに魅了されたんです。
前回も書きましたが、NYという大都会の喧騒を撮影しているけども、撮影者の内面にある静的な視点が表れていて、動的と静的なコントラストが極めてクール。
好評だったために、2回目の展示も企画されましたが、コロナで延期になり、もう中止か、、、と思っていたら2020年にやっと2回目が開かれました。
展示のために借りた写真はコロナのためにアメリカへ返却もできず、ずっと日本で保管していたようです。
もちろん2回目の展示も行きました。
しかし、感動は1回目よりちょっと控え目だった気がします。
https://www.dig.co.jp/blog/danwashitsu/2020/08/post-94.html
こうしたモノクロも写真もかっこいいですけどね。
それはなぜか?
理由は色にあると思います。
ライターの最大の魅力はカラー作品にあると思っているのですが、2回目の展示はモノクロの割合が多く、そこがちょっと不完全燃焼でした。
1960年代当時、芸術写真はモノクロに限るという認識が一般的で、カラーはモノクロよりも芸術性が低いとみなされ、軽く扱われたらしいです。
しかし、こんなに1960年代のNYの色を鮮明に、しかも効果的に写し出している写真は他にないのじゃないかと。
これをモノクロと比較して価値が低いとされてしまうなんて、そういう時代だったんですねぇ。
若き日のアンディ・ウォーホールを捉えた1枚。
ライターは、厳格なユダヤ教の家庭に生まれ、画家を志してNYに移住し、その後写真家に転向します。
彼は生涯に渡って自分のことを写真家であり、画家であると言っています。
展覧会では画家としてのライターの作品も多数展示されていますが、画家であったからこそ、人をはっとさせるこの色なんだなぁということがわかります。
一般的にはあまり言われないことですが、画家と写真家の才能には共通点がある、それをライターの作品から読み取れます。
フランスで印象派以後に出てきたナビ派、そして浮世絵から影響を受けたようですが、それが作品を見てもすぐにわかる。
こんな構図、カッコいいの一言ですね、、
雪の降るNYの街で赤い傘をさす人を捉えた作品、黒いテントの向こうに見える雪の降る白い世界のコントラスト。
このあたりのアングルは、浮世絵のようで、見る人を唸らせます。
太田大八さんが描いた、僕が大好きな絵本「かさ」、そしてこちらも大大好きな絵本で、エズラ・ジャック・キーズが1960年代のNYを描いた「雪の日」を思い出しますね。
今回の展示では、前の2回にはなかった、雑誌ハーパーズ・バザーに掲載されたファッション写真が展示されています。
ファッション好きな人もきっと興味深いでしょう。
しかし80年代に入ると、ライターはスタジオを閉めて、表舞台から姿を消してしまいます。
こういう写真を撮る人は、生活のためであっても商業写真を撮っている自分との葛藤がきっとあったに違いないと思いますね。
ファッション写真が悪いというつもりはまったくないですが、作家性を追求したい人とはそういうものだと思います。
1960年代のハーパーズバザーの表紙も撮影しています。
会場では、60年代の貴重なファッション誌をたくさん展示。
そこから再度脚光を浴びるのは晩年。
そのきっかけとなったのは、2006年にドイツの出版社シュタイデルから発刊された初の写真集『Early Color』でした。
僕はPOSTっていう、これまた尖った書店で買いましたが、(確か平林奈緒美先生がサカナクションのジャケットの元となる魚の図鑑を買った店)すっごくいいです。
モノクロではなく、1940年代~60年代の初期のカラー作品だけを収録した作品集です。
この本、いいっすよ。
オススメです。
雪の日を撮影した1枚。白と黒のコントラスト
忘れてならないのはライターは画家だということです。
今回の展覧会の見せ場は、展示の最後に設けられたスライドによる巨大スクリーンの展示です。
小さい35mmのスライドフィルムを、ホールのようなデカい空間で、天井まで壁面一杯に何枚も同時に投射して鑑賞できるなんて。
天井があまり高くない、以前のBUNKAMURAだったら実現できない手法でしょう。
東急本店の取り壊しに伴い、今BUNKAMURAはヒカリエの9階に移動しています(たぶん仮会場)
作家自身も自宅で、スライドを使って自ら撮影したフィルムを壁に写して鑑賞していた。
その自宅の様子も会場で再現されています。
この最後の部屋の巨大スクリーンによる展示が良かった。
かなり良い展示。
8/23水曜まで、ヒカリエ9階のBUNKAMURAで開催してます。
「ソール・ライターの原点 ニューヨークの色」
毎日暑いですが、ぜひ熱いこの展示、見逃さないように!!!

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松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
    青山ブックセンター