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(営業をせず)コンペを獲る提案書の書き方

仕事
Oct 04,2017

この仕事を20年以上続けていると、提案書を書く機会がかなり多いです。

たぶん今まで500件、いや1,000件くらいの提案書を書いてきたんじゃないかと思います。

提案書の内容は会社によって様々ですが、うちの会社の提案書は決まった課題に対する既存サービスのソリューションではありません。

クライアントが持つぼんやりとした課題に対して、どれだけリアルな改善モデルを提示できるか?というのが弊社で作る提案書のアウトラインになります。

これは営業活動をまったくしていない、代理店を挟まない取引が多いという、うちの会社の特徴でしょう。

営業をしていないので売るサービスがなく、ほぼ全案件スクラッチでの提案なのです。

多くの提案書はこの骨子で書きます。
既存クライアントから新規案件依頼の場合も提案書を書きますし、初対面のクライアントに対してページ数の多い提案書を書く場合もあります。
またプロジェクトの途上で何度も提案ドキュメントを提出するケースも多々あるでしょう。
提案書としてフルのストーリーを書く場合の多くはコンペです。
コンペこそ提案の真髄。
アイデア、解決策の切り口、プレゼンテーション、コスト、そして熱意、自分の持つすべての能力が試される機会だと思います。

自分は昔からコンペが大好きでした。
東京にいる顔の見えない同じ役職の相手(他社のプロジェクトマネージャーやディレクター)と、時間含め与えられた同じ条件下で、提案の内容だけを競うのは、またとない腕の見せどころだからです。
会社の規模や知名度がコンペの条件だった場合は本当にガッカリします。
そのような前提条件で決めるなら、コンペ開催の意味がないではないかと。
自分は常に今まで培った知識、経験を総動員してコンペの提案書を書いてきました。
そして20年まったく営業していないという事実が示すように、呼ばれたコンペは必ず獲ることを信条に、多くの案件を提案書で獲得してきました。
それは会社の生命線とも呼ぶべきものです。

さて前置きが長くなりましたが、たくさんの業種、課題の種類に対して様々な提案書を書いてきましたが、その多くは共通する筋立てを持っています。
案件規模の大小、対象となる媒体に関わらず、共通する見出しで構成されています。
今回はその一部をここで紹介したいと思います。
あくまで自分のオリジナルの考え方なので、他の人が考えるものとは異なっているかもしれません。
(他の会社が書いた提案書を見る機会は、ほとんどありませんので)
そのつもりで見てください。
提案書の骨子は「要望」「分析」「立案」「具体的な解決策」「計画」の5つのステップに分かれます。
以前コクールルネサンスのトータルブランディングの事例を紹介しましたが、わかりやすいようその事例の見出しを参考として各章に入れてみました。
↓ブランド実績の記事はこちら↓
https://www.dig.co.jp/blog/danwashitsu/2017/05/post-15.html
ヒアリング
まず最初に、要件について先方から聞いた内容を提案書の冒頭に入れます。
これは枕のようなものですので、案件種別に関係なく必ず入れましょう。
以後に続く提案に対する序章として、リマインドの意味も込めてオリエンテーションで伺った内容を記述します。
ここで重要なことは、個人のフィルタを通した感想や改善する方針は一切書かず、クライアントから聞いた言葉、オリエンシートに書いてある内容をそのまま記述することです。
分析調査
次に課題領域の調査分析を行います。
これも案件によって内容はかなり異なりますが、Webサイトのリニューアルであれば、競合サイトや同じ業種のサイト施策を調査したり、雑誌やショップであればターゲットの属性を調べたり、傾向やトレンドを調査することが多いです。
ここで重要なことは、ターゲットとなる消費者のマインドやニーズを明らかにすること。
しかし調査会社を使って調査できる前の段階ですので、自分の経験をもとにオープンデータから要素を拾い出し、まとめる技術が必要になります。
戦略立案
マーケット調査やターゲット属性分析から明らかになった内容を元に、解決の方針を考えます。
ここでは具体的な解決策の提示というより、どのような方向・切り口で考えて課題を解決するかということを記述します。
解決策が複数ある場合は、それをパターンで提示することもありますが、その際にはそれぞれに対してメリット、デメリットを明確にする必要があるでしょう。
またスローガンのような、簡潔なコピーによって方向性を伝えることもあると思います。
ここで重要なことは、先方の要望から外れることなく、トレンドやニーズを意識しながら、クリエイティブの意思を提示することです。
具体的な施策
方針に沿った具体的な解決策を提示します。
うちの会社では多くの場合、ビジュアルによる解決策を求められるケースが多いです。
しかしながら、分析と方針から導き出された解決策がビジュアルである場合、なぜそのビジュアルなのかを裏付けるための論理的な説明資料が必要です。
うちの会社では必ずそのような解説を提案書に入れるようにしています。
推進計画
課題を解決するプロジェクトに必要なスケジュール、コスト、体制などは一番最後に記述します。
クライアントの多くは、類似課題の解決にどれくらいの実績を持っているのかを注意深く検討しますので、それが判断できる資料となっていることが望ましいと思います。
1本のストーリーとして成立させるために
と、ここまである程度一般的なことを書いてきましたが、コンペなどの提案時において、もっとも重要なことは何でしょうか?
具体的な解決策だと思われるかもしれませんが、決してそうではないと考えます。
前述のとおり、具体的な解決策が成立する背景は、ターゲットとコンセプトの関係が握っているのです。
ですので、ここがつながっていなければ具体的な解決も1本のストーリーとして成立しません。
最初に何をすればいいのか?
もし仮に、あなたが提案する側で、オリエンテーションに参加してクライアントの要望を聞いたとします。
2週間後に提案してくださいと言われたら、会社に帰って一番最初に何をしますか?
それは仮説を立てることです。
提案書に仮説のくだりは書きませんが、使う立場に立ってベストなことは何なのかをまず考えることです。
当たり前のように聞こえますが、それを最後までブレずに1本のストーリーにすることは結構難しいことだと思います。
実は、ヒアリングを受けて分析作業に移る際に必要なアクションは、仮説に基づく検証なのです。
ゼロからの分析ではなく、立てた仮説が正しいかどうかを検証する視点で挑まなければなりません。
まず仮説を立てましょう
提案まで2週間しかありません。
膨大なデータを拾って1つ1つ分析していたらキリがない。
必要なことは仮説に関連する該当データのみを調べて、短時間で結論まで持って行くことです。
そうでなければ、短期間で1本の強いストーリーは作れません。
この作業が勝敗を分けると言ってもいいでしょう。
しかし仮説には推測の要素が含まれています。
推測の領域から具体的かつリアルなアイデアを立案するためには、消費者としての幅広い経験と知識が必要です。
提案のギリギリまで、推測に基づいて立てた仮説と、現実的な施策の間を何度も行ったり来たりする。
仮説が確信に変わったとき、コンペのプレゼンテーションにより一層の自信が持てるのです。
別の表現をすると、仮説は感度と言い換えてもいい。
感度である以上、ハズれる場合があります。
ズレはオリエン内容の解釈の違い、読み間違いで起こります。
ここの精度を上げるためには、経験とデータ収集の訓練しかありません。
僕もフォーカスを誤り、提案の的がハズれてコンペに落ちてしまったことは多々あります。
その多くは仮説自体が間違っていたからです。
必要なことは常に消費行動を見ていること。
最後に忘れてはならない重要なことを1点。
相手の心を打つためには、自分が繰り返し検証し、点検し、最後の最後まで諦めず、考えを深くしていく必要があります。
表面的なことでは決してプレゼンは通らないのです。
最終的には自分の熱意が相手に伝わることが、提案には最も重要な要素かもしれません。
熱意もスキルだということ。
論理的な説明を感情に訴える共感レベルまで引き上げること。
これは非常に大切なことだと思います。

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松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
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