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東京多摩地区はカルチャー震源地 4

音楽
Dec 14,2018

さて3回に渡って書いてきたこのマニアックなネタも今回で最後です。(次は番外編)

僕は決してシーンそのものに属していたわけではなく、周りの人たちを見て感じたことを書いていますが、もっと詳しいことを聞きたかったらシーンに属していた人に聞くのがいいと思います。

80年代リバイバルの今、当時の話を聞けば、きっと面白いと思いますよ。

フリッパーズギターの前身ロリポップソニックは5人組
前回はモッズに始まり、GSガレージのブームまで書きました。
ガレージも下火になると、次にやっと少しシャレオツな音楽の波もやってくるわけですが、その前に・・・
僕のちょっと上のセンパイたちの世代でも、いくつかのムーブメントがあったので少し紹介しておきます。
いくつかの例をあげると・・・ 当時、渋谷センター街のビルの上にあったナイロン100%という店に集まった人達、サエキケンゾウをはじめとする水族館レーベル、東京タワーズ、京浜兄弟周辺、 ミュートビート、ショコラータなどトラレーベルというカセットテープを発表の場としたアーティスト、そして近田春夫&ビブラトーンズ周辺、 こないだ中西さんは惜しくも亡くなってしまいましたが、プラスチックス、バッツなど原宿にあった伝説のクラブ、ピテカントロプスに集まったアーティスト周辺、 ツバキハウス、西麻布TOOLS BAR、ピカソ周辺にいた藤原ヒロシ、高木完、、などなどがそうだったように思います。 それら先輩たちのグループは、当時の僕にとって、どこかお洒落すぎる、ファッション先行のイメージがあって、なかなか馴染めませんでした。 かと言って、頭脳警察や子供バンドなど、東京ロッカーズ周辺もイマイチ馴染めなかったんですが。 世代的なこともあるかもしれませんね。 一方、僕たちの世代の多摩地区のブームは、過去の英国音楽をベースにしたバンドが多く、不器用で、ダサくて、商業主義になり切れない、親近感がありました。
「いい女ってなんでこっちに来ないの?(同感w)」近田春とビブラトーンズ
後にADC賞を取る立花ハジメのGSギターが冴えるプラスチックス
藤原ヒロシとタイニーパンクスを結成する高木完、ピチカート5のギターブラボー小松
前回までは、モッズやガレージなど、どっちかっていうとまったくメジャーではないインディーズなことばかり書きましたが(ヒロトやマーシーは超メジャーになりましたが)、そんな多摩地区にあって、ちょっとお洒落なブームもあったのです。 英国では、パンクやニューウェイブ、そのあとのニューロマンティックのブームも去って、次にやってきたのがネオアコースティックという音楽ジャンルでした。 通称「ネオアコ」です。
多摩地区でもGSやガレージの少しあとに静かなブームになっていました。 古くは「オレンジジュース」「ウィークエンド」、その後の「アズテックカメラ」、ベンワットやトレーシーソーンを挟みながら、モリッシーとジョニー・マーを擁する「スミス」へとつながっていくイギリスの音楽です。
彼らは主にチェリーレッドやラフトレードレーベルに所属するバンドたち。 後期は「アンテナ」が所属したクレスプキュールや「モノクロームセット」「ルイ・フィリップ」がいたELLEレーベルなども有名でしたね。 憂いを持った色の白い、少年のような美男子が謳うビジュアル系の音楽です。 笑 パンクとは真逆、中性的でインテリ、ナルシスト。
初代ネオアコ?英国からオレンジジュース
死ぬほど聞いたトレイシーソーンのNight & Day。サイコー
同じ大学の1つ下の後輩が「BRIDGE」というネオアコのバンドを組んでいましたが、そのバンドのベーシストがカジヒデキだったこともあって、一部の間でカリスマ的な人気がありました。 同じく、多摩地区にある町田の高校の同級生が組んでいた「ロリポップソニック」というネオアコのバンドも知られていました。
彼らと自分たちのバンド(僕が当時リリー・フランキーと組んでいたバンド)で、一緒にクリスマスパーティをやろうぜ!という企画が盛り上がったことがあります。
この「ロリポップソニック」で歌っていた2人が、後の「フリッパーズギター」になるのでした。 まだ当時はバンドスタイルで、メンバーにキーボードを弾く女子がいる5人組でしたね。 その頃、恵比寿にあったヴィヴィアンウェストウッドの店の2階を貸し切って、クリスマスパーティを開き、色々な人を呼んでバンド演奏をしました。
その時の演奏の模様をビデオカメラで撮影していたのが、今のdigの取締役という・・・笑 なんとも面白いですね。
今でもそのビデオがうちにありますが、25歳くらいのオザケンとリリー・フランキーが同じフレーム内に映っている映像は、かなりレアです 笑
YOU TUBEにアップしたら事務所から怒られるだろな・・・・w
ELLEレーベルからはインド系イギリス人ビドが歌うモノクロームセット
ネオアコブームが起きた少しあと、渋谷のHMVが提唱した「渋谷系」という音楽ジャンルが出てきますが、これも実は「フリッパーズギター」「オリジナルラブ」をはじめ、西東京の多摩地区から出てきたバンドが多かったように思います。
その中の1つに、僕が加入していたバンドが所属していたクルーエルレーベルもありました。
そのレーベルから、「ラブタンバリンズ」という渋谷系としてバカ売れするバンドも登場します。 他にも当時対バンだった「フェイバリットマリン」「カヒミカリィ」などなど、シーンはサブカル一色でした。 彼らと一緒にライブを行った渋谷クアトロには、雑誌「オリーブ」の読者女子たちが大量に集合。
みんなギンガムチェックのシャツにホワイトリーバイス、ベレー帽をかぶっていて、ホントに冗談かと思うくらい同じ格好の女子ばかり一堂に集結していて、気持ち悪くて笑ってしまった。
しかし、それは多摩地区のインディーズ現象が、センターに波及し、日本の音楽シーンを牽引するブームを作った瞬間だったと思います。
渋谷系のカリスマ ラブタンバリンズ。のちに藤原ヒロシとユニット結成
そのあとには、また英国からの流れでACID JAZZのブームがやってきます。
アシッドジャズが日本に入ってきた時、それを積極的に紹介したのはパルコでした。
CMに起用、パルコ編集のCDまで出して、渋谷系の次の大本命として渋谷から発信という認識を与えようとしていたと思います。
パルコはその頃、WAVEというレコードショップもやってましたから。
モッズやネオアコを通過したあと「クールスプン」「ワックワックリズムバンド」など、日本のバンドにもこの流れは引き継がれていきました。 そしてシーンはそのあとにやってくるスエディッシュポップ、「カーディガンズ」にバトンを渡し、再びネオアコの時代が続きます。
僕はというと、その頃はM-floのボーカルだったリサとバンドをやってましたww 一応CDも出しましたが。
5人から2人になったフリッパーズギターはバカ売れしました
さてさて話を戻すと、 「ブルーハーツ」も、「オリジナルラブ」も、「フリッパーズギター」も、いきなり登場したわけではなく、多くのバンドが活動していたインディーズシーンから頭角を現してきたバンドです。 渋谷や原宿ではなく、東京の中心から離れた中央線沿線の多摩地区からやってきたのでした。
これは高度成長期に、多くのお父さんたちが移り住んだ街=多摩地区での生活、マイカーを持ち、戸建てに住むという郊外型カルチャーと何かしら関係があるのかもしれません。
東京の東側で、このような音楽シーンがあったという事実はあまり聞いたことがないですから、きっと関係があるに違いないと勝手に思ってます。
渋谷系のバンドの多くは、西東京にマイホームを持つ団塊世代のお父さんの息子たちですから。
郊外型のライフスタイルと、音楽的な偏差値の関係を調べてみたら面白いかもしれないですよ。 大瀧詠一だって福生なのです(ちょっと意味合い違いますけど 笑)
そんなわけで、なぜか西東京の多摩地区は、カウンターカルチャーの発信地だったと確信しています。 モッズから色々な話題に飛び火しましたが、あの頃の東京は毎週何かが起こるような、常にワクワクする空気が流れていた時代でした。 当時の多摩地区は、モッズからガレージ、そしてネオアコまで、中央の音楽シーンに影響を与える音楽カルチャーの宝庫だったと思います。

前回の東京多摩地区はカルチャー震源地1の記事はこちらから↓↓
https://www.dig.co.jp/blog/danwashitsu/2017/03/post-7.html

前回の東京多摩地区はカルチャー震源地2の記事はこちらから↓↓
https://www.dig.co.jp/blog/danwashitsu/2017/11/2-4.html

前回の東京多摩地区はカルチャー震源地3の記事はこちらから↓↓
https://www.dig.co.jp/blog/danwashitsu/2018/12/3-1.html


次回は番外編

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松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
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