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SNSとブランドロゴの考察

ファッション
Mar 15,2019

SNSが普及している状況に合わせて、デザインも大きく変化していることを皆さんは感じていますか?

何気なく普通に生活していると、あまり気が付かないかもしれませんが、SNSはデザインにも確実に大きな影響を与えています。

その1つがブランドデザインだと思います。

新しく生まれ変わったセリーヌ
表参道を普通に歩いていてもブランドデザインの変化を身近に感じることができるので、今日はそれについて少し書いてみますね。
スペインを代表する数少ないハイブランド、ロエベ(LOEWE)が2014年にロゴを変更した時には大きな話題になりました。
ロエベの頭文字である、アルファベットのL4つを組み合わせたあのシンボルマークです。
クリエイティブディレクターのJ.W.Andersonが、M/M Parisに依頼してリブランドしたもの。
J.W.Andersonは、その後も快進撃を続けていますね。
最近ではユニクロとのコラボが一番知られているでしょうか。
今期も展開してます。
この出来事は以前、レディスシューズの老舗、銀座かねまつのブランドリニューアルをうちの会社で手掛けた際に、このブログでも触れました。
https://www.dig.co.jp/blog/danwashitsu/2018/06/70.html
右がリニューアル前の表参道店。以前よりアイキャッチとしてロゴが強く機能(左)
右の新しいロゴはシンプルで、人の記憶に残る仕掛けがあります。
表参道と青山通りの交差点近くにあるロエベのショップも、この新しいロゴを使って大きくリニューアルされたのは記憶に新しいと思います。
ロエベのリブランディングで行われたアプローチは、もちろんクリエイティブディレクターの変更に伴う話題作りの面もありますが、それだけではないでしょう。
新しいロゴマークと以前のものを比較してみると、フォントは字間を詰め、ステムを太くして視認性を高め、マークはスクリプト書体を使ったアルファベットのLの接着点を分離し、よりシンプルに単純化しています。
平たく言うと、書体を太くして、フォルムを単純化、記号化の傾向を強くしたということです。
これはモバイル端末でも明確にマークとして認識~記憶させることを意図したものでしょう。
50平方メートルの大きな店の看板でも、液晶ディスプレイで見るSNSの1センチ四方のマークでも、同じブランドの世界観=視覚的に忘れさせない存在価値を与えるものでなければならないという意図があります。
ただ世界中にあるすべての店舗のサイン、ショッパー、タグ、伝票、販促物などを作り変えるということは莫大な投資が伴うことでしょう。
それでも行うのはその効果が見込まれるからです。

この流れは他のブランドにも見られます。
昨年末、クロエ時代から熱狂的な女子ファンを持つフィービー(Phoebe Philo)に替わり、それまでディオールを担当していたエディ・スリマン(Hedi Sliman)へクリエイティブディレクターの変更を発表したセリーヌ。
エディにクリエイティブが代わったことで、ロックなファッションになってしまうのではないか?と多くのセリーヌファンを心配させましたが、フィービーが手掛けたバッグはアーカイブで残して販売を継続するというナゾの安心感・・・
デザイナー交代とともに、ブランドロゴも変更されました。
どっちが新しいロゴかわりますか?
個人的には昔のロゴの方が好きですけど。
一見同じように見えますが、新しいロゴは、以前Eの上にあったアクセント記号が消えています。
そしてロエベのアプローチと同様、字間が詰まり、書体が太くなって単純化され、ミニマリズムの傾向が強くなっています。
僕はアクセント記号がある以前のロゴの方が、フェミニンさも感じられて好きですけど。。
ロエベの隣にある青山のショップも、ロゴの変更に合わせてリニューアルしました。
エディはサンローランのクリエイティブディレクターになった時も(2013年)、それまで使われてきたロゴを変更しましたが、こちらも個人的には斜体のかかった以前のロゴの方が好きだった。
これも個人的には以前の左の方が好きですが。
もう1つ事例を紹介します。
英国の老舗ブランド、バーバリーです。
表参道から明治通りに降りていく左側にショップがあります。
こちらもクリエイティブディレクターが、元ジバンシーのデザイナー、リカルド・テッシ(RICCARDO TISCI)に代わりました。
それにともなってロゴを変更しています。
アプローチは同じです。
フォントはセリフからゴシック体になり、字の間は詰められ、複雑な馬のマークが消えています。
皆さんはどちらが好きでしょうか?
表参道のお店はロゴ変更に合わせて、現在工事中となっています。
確かに視認性は以前より上がっています。
表参道店のサインはまだ昔のままですね。。
巨大なサインでも、SNSのアイコンでも、サイズや媒体に関係なく、最適な形でブランドの世界観を提供していかなければならない。
しかしサインや広告の効果は後ろへ下がり、今コンシューマに対して最も影響力を持つのがデジタルデバイスです。
そこに最適化を図る=モバイルファーストという前提で考えると、書体はすべて太いゴシックで、スペースを有効に使うため字の間は詰められ、複雑な飾りのモチーフは使用しない、単純でなければならない、ということにならざるを得ないのです。

しかし、そうしたアプローチで作られるブランドロゴが、世界にあふれ均一化してしまうと、そもそもブランドという単語が持つ意味=他との差別化、という視点は薄くなり、同一化していくのではないかと。
1つ1つはシンプルで実用的なフォントであり、読みやすいかもしれない
しかし汎用性が高いということは、同一化しやすいことを意味していると思います。

表参道を歩いているだけで、そんなことを色々感じることができます。
皆さんも、通りを歩きながらそんな視点で見てみてください。

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松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
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