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日本で生まれたシティポップ世界侵略

音楽
Apr 22,2021

一昨年そして昨年と、このブログでも何度か触れてきましたが、今シティポップが熱い。

僕は相変わらず、竹内まりやの「プラスチックラブ」を毎週末、大音量で聴いています。

しかもアナログ盤で。

以下の記事を書いたのはもう2年も前のようですね。

あれからも、どんだけ好きやねんっていうくらい聴いてます。

https://www.dig.co.jp/blog/danwashitsu/2019/04/80.html

80年代を代表する鈴木英人のイラスト
昨年末は、高円寺の小さなライブハウスで行われた山下達郎のリモートライブを見て熱くなりました。
リバイバルの流れを受けてなのか、そこでもやっぱり「プラスチックラブ」を歌ってくれて素晴らしかったなぁ。
としまえんの流れるプールのことを歌った「さよなら夏の日」も、去年のとしまえん閉園の際、何度も繰り返し聴いて、おセンチな気持ちになり、、
また同じく去年出版されたブルータスの山下達郎特集も買って読み込んだ。
https://www.dig.co.jp/blog/danwashitsu/2020/09/post-95.html
(達郎はデジタル配信は一切許可しておらず、誰かがアップしたものは全部削除されてます、、)
上段左から、はっぴいえんどが72年に発表した「風街ろまん」、奥村靫正のデザインによる73年のラストアルバム「HAPPY END」。 下段は、はっぴえんどの後に大瀧詠一が発表した75年のソロ1st、右は細野さんがベースを弾いているユーミンのデビュー盤(まだ多摩美の学生だった時)
左上から、これぞシティポップ!シュガーベイブ(75年)、その右はシュガーベイブ解散後の大貫妙子の1st(76年)、下段左、山下達郎の名曲収録(80年)、その右は山下達郎夫人 竹内まりやのプラスチックラブ(84年)
「プラスチックラブ」は、日本以外の国に住む多くのアーティストにカバーされて昨年世界的な話題になったけど、この曲が出たのは1984年。
ほぼ40年前のバブル真っ只中の曲です。
歌詞の内容は乾いた都会の孤独、虚脱感を歌っているのに、曲は最先端で洒落ている、
そのアンバランスさが、右肩上がりの経済で変わっていく社会と、それについていけない人の内面を浮かび上がらせているような歌で、バブルの状況そのものです。
「プラスチックラブ」に続き、今年は松原みきの「真夜中のドア」も世界的な大ヒットに。
Spotify グローバル バイラルチャートで15日連続 世界1位
Apple Music J-POPランキング12カ国で1位
この曲は「プラスチックラブ」のさらに前、1979年の曲。
ご本人は既に亡くなっているのに、2021年現在、世界的ヒットになっています。
このような現象は、サブスクヒットとも言うべきかつてない現象でしょう。
聖子ちゃんとのデュエットがたまらない!!!!!
聖子ちゃん、マジで歌うまい

日本国内だけで起きた特異な現象、バブルという時代。
その中で、多くの日本人の心を捉えたシティポップというジャンル。
シティポップっていったい何なのだろう?
少し調べてみました。
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洗練された都会的なニューミュージックで、
洋楽(特にアメリカ音楽)に日本独自のアレンジを加えたもの
都市生活者ならではの孤独感や哀愁を良いメロディと洒落たコードに乗せて歌い上げたジャンル(wikiより要約)
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なんだか、わかったようなわからないような説明ですが、
シティポップの「シティ」とは、「東京」を意味しているそうで、少しオドロキ。
主にミュージシャンたちの活動の場が東京だったことから、「東京=シティ」の「音楽=ポップス」というのが語源のようです。
そういえば、ユーミンも細野さんも、山下達郎も全員東京出身ですね。
松本隆もそうです。
シティポップは、バブル期の「東京の音楽」ってことなんですね。
この「東京」っていう定義が、インターネットのない80年代らしくて興味深い。
シティポップの曲をカセットテープに録音し、週末に東京から湘南まで、録音した曲をカーステレオで流しながら彼女とドライブするのが80年代でした。
(僕は全くやってないですけど・・・汗)
軽くて洒落ているシティポップの曲は、ドライブする際にカーステレオで聴くのに最適で、
東京に住む都市生活者の(スカしたw)ライフスタイルにマッチしたわけです。
シティポップのジャケットに、憧れのアメリカの情景や海のイメージが多いのはそのためでしょう。
1981年発表の大瀧詠一の名盤「A LONG VACATION」の40周年記念リマスター盤が先月発売されました。永井博のイラストで有名。
シティポップとともに永井博のイラストもリバイバル。 左上から2016年ジャンクフジヤマ、2021年一十三十一、Tシャツも色んなところで発売されています。
特異な時代を背景にアジアの一都市=東京で生まれた40年前の音楽、それが今や浮世絵のように世界が求めるインターナショナルなスタイルになっている??
シティポップは、アメリカやイギリスでサンプリングとして使われたことから火が付きました。
それが今や、東南アジアからシティポップのアーティストがたくさん出現しています。
バブルという言葉が示すように、中身の伴わない表層だけを追求した80年代の東京の音楽を、外国の人がこぞって求める理由は、消費や経済が頂点を極めた中で生まれたキラキラした要素、二度と訪れない特異な時代の儚い音楽、どこまでも洒脱な軽さを求めた創作活動に魅力があるからでしょうか?
それが証拠に、90年代に起きたバブルの崩壊と共に、シティポップは急激に魅力を失い、消えてしまうのです。
上段2枚は永井博と双璧を成す80年代を代表するイラストレーター鈴木英人による山下達郎のアルバム、下段左は75年吉田美奈子、右は79年荒井由実のアルバム、ともにペーター佐藤のイラスト。

先月大瀧詠一のシティポップの名盤、「A LONG VACATION」の40周年記念リマスター盤が出て、シティポップにはさらに注目が集まっているように思います。
大瀧詠一同様、同じく「はっぴいえんど」に在籍した細野晴臣、松本隆、鈴木茂たちもシティポップを通過し、その後の日本の音楽シーンに多大な影響を与えました。
特にYMOにつながる細野さんや、聖子ちゃんや筒美京平との仕事で珠玉の名曲を(太田裕美もいいけど、木綿のハンカチーフを謳う橋本愛ちゃんは可愛いw)生み出した松本隆の仕事は見逃せません。
シュガーベイブの山下達郎、大貫妙子もまた同じですね
上段は82年の伊藤銀次のアルバムでイラストはOSAMU GOODSで知られる原田治、下段は同じく80年代にハートカクテルでブレークしたわたせせいぞうによる濱田金吾、松岡直也の作品。ともに1985年
今東京人の最新刊でシティポップが特集されています。
興味のある人はぜひ読んでみてください。
とても面白い。
この表紙に起用されている江口寿史もまた、80年代に「ストップ!!ひばりくん!」で一世を風靡したイラストレーターです。
奇しくも、大瀧詠一の「A LONG VACATION」と「ストップ!!ひばりくん!」のデビューは1981年で同じ年。
バブルのスタートともに、日本社会が大きく変化していく転換期です。
3月に発売された東京人のシティポップ特集はオススメです。
江口寿史がデビューした週刊ジャンプ「ストップ!ひばりくん」の掲載は1981年。これは大瀧詠一の名盤の発売と同じ年。うちにもひばりくんの単行本があります。
シティポップのアルバムはイラストを使用したものが多い。
前述した大瀧詠一と永井博、山下達郎と鈴木英人、ユーミンとペーター佐藤、伊藤 銀次
と原田治、濱田 金吾とわたせせいぞう、
これらのイラストは、シティポップの音楽観同様に、現実感のない都市の情景を明るくビビッドな色による塗り絵のようなフラットな表現で、どこまでもPOPさのみを追求して描かれているのです。
それは、中身の伴わない表層だけを追求した80年代の東京の空気感、
80年代のライフスタイルと共通する部分が多くあるように見受けられます。
2021年の今、それをノスタルジーと見るのか、新しいと見るのかは、僕たちの感じ方だと思います。

今、世界から注目されている東京で生まれた音楽=シティポップ。
そのジャケットに起用されたイラストたちもまた、かつて世界が注目した江戸の浮世絵と似たスーパーフラットな世界、共通するのはピークを迎えた東京、そして日本的要素があると言ってしまうのは言い過ぎでしょうか。。

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松本知彦 Tomohiko Matsumoto

東京新宿生まれ。
漫画家の父親を持ち、幼い頃より絵だけは抜群に上手かったが、
働く母の姿を見て葛藤し、美術を捨てて一般の道に進むことを決意。
しかし高校で出逢った美術の先生に熱心に説得され、再び芸術の道に。
その後、美術大学を卒業するも一般の上場企業に就職。
10年勤務ののち、またしてもクリエイティブを目指して退社独立、現在に至る。

  • 趣味:考えること
  • 特技:ドラム(最近叩いていない)
  • 好きなもの:ドリトス、ドリフターズ、
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